第6章 円運動と万有引力

単振動
─ なぜ sin と cos が現れるのか

高校物理では、単振動の位置は $x = A\sin(\omega t + \varphi)$ と表されると学びます。 大学物理では、この式がどこから来るのかが分かります。 ばねの復元力 $F = -kx$ とニュートンの運動方程式 $F = ma$ を組み合わせると、微分方程式 $\ddot{x} = -\omega^2 x$ が得られます。 この方程式の解がまさに $\sin$ と $\cos$ なのです。

$\sin$ と $\cos$ は恣意的な選択ではありません。 「2回微分して元の関数の符号を反転させる」という条件を満たす関数は $\sin$ と $\cos$ だけです。 物理法則 $F = -kx$ がこの数学的構造を要求しているのです。

1高校での扱い(事実の確認)

高校物理では、単振動を次のように学びます。

  • ばねの復元力は $F = -kx$($k$:ばね定数、$x$:つり合いの位置からの変位)
  • 単振動の位置は $x = A\sin(\omega t + \varphi)$ と表される($A$:振幅、$\omega$:角振動数、$\varphi$:初期位相)
  • 周期は $T = \dfrac{2\pi}{\omega}$
  • ばね振り子の周期は $T = 2\pi\sqrt{\dfrac{m}{k}}$

これらの公式を覚え、問題に当てはめて解くのが高校物理のアプローチです。

ここで、高校の扱いの特徴を整理しておきます。

  • 「なぜ $\sin$ や $\cos$ なのか」が説明されない。復元力 $F = -kx$ が与えられ、運動の式として $x = A\sin(\omega t + \varphi)$ が与えられるが、両者の間の論理的なつながりが示されない
  • $\omega = \sqrt{k/m}$ がなぜこの形なのか分からない。公式として覚えるが、$k$ と $m$ がなぜこのように組み合わさるのかは説明されない
  • 速度や加速度の公式が個別に与えられる。$v_{\max} = A\omega$、$a_{\max} = A\omega^2$ などが別々の公式として提示され、それらが1つの式から導けることが見えにくい

これらは高校物理の欠点ではなく、微分方程式という道具を使わない範囲での合理的な扱い方です。 大学物理では、$F = -kx$ から出発して $x = A\sin(\omega t + \varphi)$ を数学的に導出します。

2大学の視点で何が変わるか

具体的な説明に入る前に、この記事を読むと何ができるようになるのかを示します。

高校 vs 大学:何が変わるか
高校:sin/cos で表されると覚える
「単振動の位置は $\sin$ で表される」と覚えて使う。なぜ $\sin$ なのかは問わない。
大学:$F = -kx$ から数式で必然的に sin/cos が導かれる
運動方程式 $\ddot{x} = -\omega^2 x$ を解くと、$\sin$ と $\cos$ が唯一の解として現れる。
高校:$\omega = \sqrt{k/m}$ を公式として暗記
なぜこの形になるかは分からない。
大学:$\omega = \sqrt{k/m}$ が方程式から自然に出る
微分方程式を解く過程で必然的に決まる。
高校:$v_{\max}$、$a_{\max}$、$E$ を個別に覚える
公式が多くて混乱しやすい。
大学:解 $x = A\sin(\omega t + \varphi)$ を微分するだけで全部出る
覚える公式は実質1つだけ。
この記事で得られること

1. なぜ単振動の位置が sin/cos になるか分かる。 復元力 $F = -kx$ から出発して微分方程式を立て、その解として $\sin$ と $\cos$ が必然的に現れることを確認します。

2. 角振動数 $\omega = \sqrt{k/m}$ がなぜこの形か分かる。 微分方程式を解く過程で、$\omega^2 = k/m$ が自動的に決まる理由を理解します。

3. 周期・振幅・位相の意味が式から読み取れるようになる。 解 $x = A\sin(\omega t + \varphi)$ の各パラメータが物理的に何を意味するかを、式の構造から説明できるようになります。

3微分方程式とは何か

まず、「微分方程式」という言葉を明確にしておきます。

微分方程式とは

未知の関数 $x(t)$ とその微分($\dot{x}$, $\ddot{x}$ など)を含む方程式のこと。

普通の方程式(例:$2x + 3 = 0$)では未知数は「数」。 微分方程式では未知数が「関数」であり、その解は「条件を満たす関数」になる。

単振動の微分方程式を導いてみましょう。ばねにつながれた質量 $m$ の物体に働く力は復元力 $F = -kx$ です。 ニュートンの運動方程式 $F = ma$ と組み合わせます。

単振動の微分方程式の導出

運動方程式:$F = ma$

復元力を代入:$-kx = ma$

加速度は位置の2階微分 $a = \ddot{x}$ なので:$-kx = m\ddot{x}$

両辺を $m$ で割って整理すると:

$$\ddot{x} = -\frac{k}{m}\,x$$

ここで $\omega^2 = k/m$ とおくと:

$$\ddot{x} = -\omega^2 x$$

この方程式 $\ddot{x} = -\omega^2 x$ が意味していることは明快です。

微分方程式が問うていること

$\ddot{x} = -\omega^2 x$ は次のことを要求しています:

「2回微分すると、元の関数に $-\omega^2$ をかけたものになる関数 $x(t)$ を見つけよ」

つまり、2回微分して符号が反転する(負号がつく)関数は何か?という問いです。

4「2回微分して符号が反転する関数」を探す

$\ddot{x} = -\omega^2 x$ を満たす関数を探しましょう。 まずは簡単のために $\omega = 1$ として $\ddot{x} = -x$(2回微分すると元に戻って符号が反転する)を考えます。

候補1:$x(t) = t^2$ を試す

$x = t^2$ の場合:

  • 1回微分:$\dot{x} = 2t$
  • 2回微分:$\ddot{x} = 2$

$\ddot{x} = 2$ は定数であり、$-x = -t^2$ とは一致しません。$t^2$ は解ではない。

候補2:$x(t) = e^t$ を試す

指数関数 $e^t$ は微分しても $e^t$ のまま(微分しても変わらないのが指数関数の特徴)です。

  • 1回微分:$\dot{x} = e^t$
  • 2回微分:$\ddot{x} = e^t$

$\ddot{x} = e^t = x$ であり、$-x$ ではなく $+x$ になっています。符号が反転しません。$e^t$ も解ではない。

候補3:$x(t) = \sin(t)$ を試す

$\sin(t)$ を微分する規則は次の通りです:$\sin(t)$ → $\cos(t)$ → $-\sin(t)$。

  • 1回微分:$\dot{x} = \cos(t)$
  • 2回微分:$\ddot{x} = -\sin(t) = -x$

$\ddot{x} = -x$ を満たしました。$\sin(t)$ は解です。

$\cos(t)$ も試す

$\cos(t)$ を微分する規則は:$\cos(t)$ → $-\sin(t)$ → $-\cos(t)$。

  • 1回微分:$\dot{x} = -\sin(t)$
  • 2回微分:$\ddot{x} = -\cos(t) = -x$

$\cos(t)$ も解です。

sin と cos が現れる理由

$\sin$ と $\cos$ は「2回微分すると符号が反転する」という性質を持つ、本質的に唯一の関数です。

$t^2$ では微分するとべきが下がり、元の形を保てません。$e^t$ は微分しても形は保ちますが、符号は変わりません。

「形を保ちつつ符号を反転させる」という条件を両方満たすのが $\sin$ と $\cos$ なのです。 これは偶然ではなく、数学的な必然です。

一般の場合:$\omega \neq 1$

実際の方程式は $\ddot{x} = -\omega^2 x$ です。$x(t) = A\sin(\omega t)$ を代入して確認します。

$x = A\sin(\omega t)$ が解であることの確認

$x(t) = A\sin(\omega t)$

1回微分:$\dot{x} = A\omega\cos(\omega t)$

2回微分:$\ddot{x} = -A\omega^2\sin(\omega t)$

右辺を $x$ で書き直すと:

$$\ddot{x} = -\omega^2 \cdot A\sin(\omega t) = -\omega^2 x$$

確かに $\ddot{x} = -\omega^2 x$ を満たします。

同様に $x(t) = B\cos(\omega t)$ も解です。最も一般的な解(一般解)は両者の組み合わせです。

単振動の微分方程式とその一般解

微分方程式:$\ddot{x} = -\omega^2 x$ (ただし $\omega = \sqrt{k/m}$)

一般解:

$$x(t) = A\sin(\omega t + \varphi)$$

等価な書き方として $x(t) = C_1\sin(\omega t) + C_2\cos(\omega t)$ もある。 $A$ と $\varphi$ は初期条件($t = 0$ での位置と速度)で決まる。
落とし穴:$\omega$ は「定義」ではなく「結果」

誤解:「$\omega = \sqrt{k/m}$ と定義する」

正しい理解:微分方程式 $\ddot{x} = -(k/m)\,x$ の解が $\sin$ になるためには、 角振動数が $\omega = \sqrt{k/m}$ でなければならない。 これは定義ではなく、方程式を解いた結果として決まるものです。

一般解の2つの書き方と位相

一般解は $x = C_1\sin(\omega t) + C_2\cos(\omega t)$ とも書けます。 三角関数の合成公式を使うと、これは $x = A\sin(\omega t + \varphi)$ と変換できます。

ここで $A = \sqrt{C_1^2 + C_2^2}$(振幅)、$\tan\varphi = C_2/C_1$(初期位相)です。

$t = 0$ でばねを引っ張って離す(初速度ゼロ)場合は $x(0) = A$, $\dot{x}(0) = 0$ となり、 $\varphi = \pi/2$ つまり $x = A\cos(\omega t)$ になります。 $t = 0$ で原点を通過する場合は $\varphi = 0$ で $x = A\sin(\omega t)$ です。

5解の物理的意味

解 $x(t) = A\sin(\omega t + \varphi)$ の各パラメータが物理的に何を意味するかを確認します。

振幅 $A$

$\sin$ の最大値は $1$ なので、$x$ の最大値は $A$ です。 つまり $A$ は振動の最大変位であり、初期条件で決まります。 $A$ は微分方程式には現れず、「どれだけ引っ張って離したか」という初期条件の情報です。

角振動数 $\omega = \sqrt{k/m}$

$\omega$ は振動の速さを決めるパラメータです。この式から2つの物理的な帰結が読み取れます。

  • $k$ が大きい(ばねが硬い)ほど $\omega$ は大きい → 振動が速い。 硬いばねは同じ変位でも強い力で引き戻すので、速く振動します。
  • $m$ が大きい(物体が重い)ほど $\omega$ は小さい → 振動が遅い。 重い物体は同じ力を受けても加速しにくいので、ゆっくり振動します。

これらは日常の経験とも一致します。硬いばねに軽い物体をつけると速くブルブル振動し、 柔らかいばねに重い物体をつけるとゆっくり揺れます。 $\omega = \sqrt{k/m}$ はこの直感を正確に数式化しています。

周期 $T = 2\pi/\omega$

$\sin$ 関数は引数が $2\pi$ 増えると元に戻ります。 $\omega t$ が $2\pi$ 増える時間、つまり $\omega T = 2\pi$ を満たす $T$ が周期です。

$$T = \frac{2\pi}{\omega} = 2\pi\sqrt{\frac{m}{k}}$$

高校で暗記した公式 $T = 2\pi\sqrt{m/k}$ が、ここで自然に導かれました。

落とし穴:周期は振幅に依存しない

誤解:「大きく振動させると周期が長くなる」

正しい理解:$T = 2\pi\sqrt{m/k}$ に振幅 $A$ は含まれていません。 大きく引っ張っても小さく引っ張っても、周期は同じです。 これは単振動の重要な性質であり、式から明確に読み取れます。

ただし、これは復元力が変位に正確に比例する($F = -kx$)場合に限ります。 振幅が大きくなりすぎてばねが線形でなくなると、この性質は崩れます。

単振動と等速円運動のつながり

半径 $A$ の等速円運動を考え、その $x$ 成分を取ると $x = A\cos(\omega t)$ になります。 これは単振動の解そのものです。

つまり、単振動は等速円運動の射影と見なせます。 $\omega$ が「角振動数」と呼ばれるのは、対応する円運動の角速度に一致するからです。 M-6-1(等速円運動)で学んだ角速度 $\omega$ と同じ記号が使われる理由がここにあります。

6高校の公式を大学の視点で見直す

高校物理で個別に覚えていた単振動の公式を、 1つの解 $x = A\sin(\omega t + \varphi)$ からすべて導出してみましょう。

解を微分して速度・加速度を導く

位置:$x(t) = A\sin(\omega t + \varphi)$

速度(1回微分):

$$v(t) = \dot{x} = A\omega\cos(\omega t + \varphi)$$

加速度(2回微分):

$$a(t) = \ddot{x} = -A\omega^2\sin(\omega t + \varphi) = -\omega^2 x$$

ここから、高校で覚えた公式がすべて出てきます。

高校の公式 大学での導出
$v_{\max} = A\omega$ $v = A\omega\cos(\omega t + \varphi)$ で $\cos = 1$ のとき最大
$a_{\max} = A\omega^2$ $a = -A\omega^2\sin(\omega t + \varphi)$ で $|\sin| = 1$ のとき最大
$T = 2\pi\sqrt{\dfrac{m}{k}}$ $\omega = \sqrt{k/m}$ と $T = 2\pi/\omega$ から導出
$E = \dfrac{1}{2}kA^2$ $x = 0$(つり合い点)で $v = v_{\max} = A\omega$ より、$E = \frac{1}{2}mv_{\max}^2 = \frac{1}{2}m\omega^2 A^2 = \frac{1}{2}kA^2$
1つの式からすべてが出る

高校では $v_{\max}$、$a_{\max}$、$T$、$E$ を個別の公式として覚える必要がありました。

大学の視点では、微分方程式 $\ddot{x} = -\omega^2 x$ とその解 $x = A\sin(\omega t + \varphi)$ さえ理解していれば、 あとは微分するだけですべての公式が導けます。

覚えるべきことが減り、忘れても導き直せるようになります。

エネルギー保存を微分方程式から確認する

$x = A\sin(\omega t + \varphi)$、$v = A\omega\cos(\omega t + \varphi)$ を使って力学的エネルギーを計算すると:

$E = \frac{1}{2}mv^2 + \frac{1}{2}kx^2 = \frac{1}{2}m\omega^2 A^2\cos^2(\omega t + \varphi) + \frac{1}{2}kA^2\sin^2(\omega t + \varphi)$

$m\omega^2 = k$ なので:$E = \frac{1}{2}kA^2(\cos^2 + \sin^2) = \frac{1}{2}kA^2$

三角関数の基本性質 $\sin^2 + \cos^2 = 1$ により、エネルギーが時間に依存せず一定であることが示されます。 エネルギー保存則が数式から自然に確認できました。

7つながりマップ

単振動の微分方程式は、力学の多くのテーマと深くつながっています。

  • ← M-1-1 位置・速度・加速度:位置を微分して速度・加速度を求める操作が、この記事の基礎になっている。$v = \dot{x}$、$a = \ddot{x}$ の定義をここで使っている。
  • ← M-2-2 運動方程式を微分方程式として解く:$F = ma$ を $m\ddot{x} = F(x)$ と書き、微分方程式として解くという大学物理の基本的なアプローチ。この記事はその具体例。
  • ← M-5-3 ポテンシャルエネルギー:ばねのポテンシャルエネルギー $U = \frac{1}{2}kx^2$ の安定平衡点のまわりの運動が単振動になる。振り子や分子振動も同じ構造。
  • ← M-6-1 等速円運動:単振動は等速円運動の射影。角振動数 $\omega$ が円運動の角速度と同じ記号で表される理由がここにある。

📋まとめ

  • ばねの復元力 $F = -kx$ と運動方程式 $F = ma$ を組み合わせると、微分方程式 $\ddot{x} = -\omega^2 x$ が得られる
  • この方程式は「2回微分すると元の関数の $-\omega^2$ 倍になる関数を見つけよ」と要求しており、その条件を満たすのが $\sin$ と $\cos$ である
  • $t^2$ や $e^t$ はこの条件を満たさない。$\sin$ と $\cos$ は恣意的な選択ではなく、物理法則が要求する数学的な必然である
  • 角振動数 $\omega = \sqrt{k/m}$ は定義ではなく、微分方程式を解いた結果として決まる
  • 解 $x = A\sin(\omega t + \varphi)$ を微分するだけで、$v_{\max}$、$a_{\max}$、$T$、$E$ の公式がすべて導ける
  • 周期 $T = 2\pi\sqrt{m/k}$ は振幅 $A$ に依存しない。これは式の構造から明確に読み取れる

確認テスト

Q1. 単振動の微分方程式 $\ddot{x} = -\omega^2 x$ が求めているのは、どのような性質を持つ関数ですか?

▶ クリックして解答を表示「2回微分すると、元の関数の $-\omega^2$ 倍になる関数」。つまり、形を保ちつつ符号が反転する関数を求めている。$\sin$ と $\cos$ がこの性質を持つ。

Q2. $x(t) = e^t$ が $\ddot{x} = -x$ の解にならない理由を述べてください。

▶ クリックして解答を表示$e^t$ を2回微分すると $e^t$ になり、$-e^t$ にはならない。つまり $\ddot{x} = x = +x$ であり、要求される $\ddot{x} = -x$ を満たさない。符号が反転しないのが原因。

Q3. $\omega = \sqrt{k/m}$ において、ばね定数 $k$ を4倍にすると角振動数と周期はどうなりますか?

▶ クリックして解答を表示$\omega = \sqrt{k/m}$ なので、$k$ を4倍にすると $\omega$ は $\sqrt{4} = 2$ 倍になる。周期 $T = 2\pi/\omega$ は $1/2$ 倍になる。硬いばねほど速く振動するということ。

Q4. 単振動の周期が振幅に依存しない理由を、数式を使って説明してください。

▶ クリックして解答を表示周期は $T = 2\pi/\omega = 2\pi\sqrt{m/k}$ であり、この式に振幅 $A$ は含まれていない。$A$ は微分方程式の解のパラメータ(初期条件で決まる)だが、$\omega$(したがって $T$)は微分方程式の係数 $k/m$ だけで決まるため。

10演習問題

単振動の微分方程式とその解について、問題で確認しましょう。

A 基礎レベル

6-2-1 A 基礎 微分方程式の検算

$x(t) = 3\sin(2t)$ が微分方程式 $\ddot{x} = -4x$ の解であることを確認せよ。

(1) $x(t) = 3\sin(2t)$ を1回微分して $\dot{x}$ を求めよ。

(2) $\dot{x}$ をさらに微分して $\ddot{x}$ を求めよ。

(3) $\ddot{x} = -4x$ が成り立つことを確認せよ。

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解答

(1) $\dot{x} = 6\cos(2t)$

(2) $\ddot{x} = -12\sin(2t)$

(3) $-4x = -4 \times 3\sin(2t) = -12\sin(2t) = \ddot{x}$ ✓

解説

(1) $\sin(2t)$ の微分は $2\cos(2t)$(合成関数の微分で内側の $2$ が出る)。よって $\dot{x} = 3 \times 2\cos(2t) = 6\cos(2t)$。

(2) $\cos(2t)$ の微分は $-2\sin(2t)$。よって $\ddot{x} = 6 \times (-2\sin(2t)) = -12\sin(2t)$。

(3) $\ddot{x} = -12\sin(2t)$ と $-4x = -12\sin(2t)$ が一致するので、$x = 3\sin(2t)$ は $\ddot{x} = -4x$ の解である。ここで $\omega^2 = 4$, $\omega = 2$ であり、振幅 $A = 3$ である。

B 発展レベル

6-2-2 B 発展 ばね振り子 物理量の導出

ばね定数 $k = 200$ N/m のばねに質量 $m = 0.50$ kg の物体をつなぎ、つり合いの位置から $0.10$ m 引いて静かに離した。次の問いに答えよ。

(1) 角振動数 $\omega$ を求めよ。

(2) 周期 $T$ を求めよ。

(3) 最大速度 $v_{\max}$ を求めよ。

(4) 位置の式を $x(t) = A\cos(\omega t)$ の形で書け(「静かに離した」ことに注意)。

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解答

(1) $\omega = 20$ rad/s

(2) $T = \dfrac{\pi}{10} \approx 0.31$ s

(3) $v_{\max} = 2.0$ m/s

(4) $x(t) = 0.10\cos(20t)$ [m]

解説

(1) $\omega = \sqrt{k/m} = \sqrt{200/0.50} = \sqrt{400} = 20$ rad/s

(2) $T = 2\pi/\omega = 2\pi/20 = \pi/10 \approx 0.31$ s

(3) 速度は $v = -A\omega\sin(\omega t)$ なので、$v_{\max} = A\omega = 0.10 \times 20 = 2.0$ m/s

(4) 「静かに離した」= 初速度ゼロ。$t = 0$ で $x = A = 0.10$ m、$\dot{x} = 0$。$\sin$ ではなく $\cos$ を使うと初期条件が自然に満たされる:$x(0) = A\cos(0) = A$, $\dot{x}(0) = -A\omega\sin(0) = 0$。

採点ポイント
  • $\omega = \sqrt{k/m}$ を正しく計算(2点)
  • $T = 2\pi/\omega$ を正しく計算(2点)
  • $v_{\max} = A\omega$ を導出(2点)
  • 初期条件から $\cos$ を選択し、理由を説明(2点)

C 応用レベル

6-2-3 C 応用 単振り子 微小角近似

長さ $L$ の糸に質量 $m$ のおもりをつけた単振り子を考える。鉛直からの角度を $\theta$ とする。重力加速度を $g$ とし、糸の質量と空気抵抗は無視する。

(1) おもりに働く接線方向の復元力は $F = -mg\sin\theta$ である。運動方程式 $mL\ddot{\theta} = F$ を用いて、$\ddot{\theta}$ を $\theta$ と $g$, $L$ で表せ。

(2) $\theta$ が十分小さいとき $\sin\theta \approx \theta$(ラジアン)が成り立つ。この近似を用いて、(1) の方程式を単振動の微分方程式の形 $\ddot{\theta} = -\omega^2\theta$ に書き直せ。$\omega$ を $g$ と $L$ で表せ。

(3) (2) の結果から、単振り子の周期 $T$ を導出せよ。

(4) 周期が糸の長さと重力加速度にどう依存するか、物理的に説明せよ。

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解答

(1) $\ddot{\theta} = -\dfrac{g}{L}\sin\theta$

(2) $\ddot{\theta} = -\dfrac{g}{L}\,\theta$ より $\omega = \sqrt{\dfrac{g}{L}}$

(3) $T = 2\pi\sqrt{\dfrac{L}{g}}$

(4) 糸が長いほど周期は長い(ゆっくり振れる)。重力が強いほど周期は短い(速く振れる)。質量は周期に影響しない。

解説

(1) 運動方程式 $mL\ddot{\theta} = -mg\sin\theta$ の両辺を $mL$ で割ると:

$$\ddot{\theta} = -\frac{g}{L}\sin\theta$$

(2) $\sin\theta \approx \theta$ とすると:

$$\ddot{\theta} = -\frac{g}{L}\,\theta$$

これはばねの場合の $\ddot{x} = -\omega^2 x$ とまったく同じ形です。$x$ が $\theta$ に、$\omega^2 = k/m$ が $g/L$ に置き換わっただけです。したがって $\omega = \sqrt{g/L}$。

(3) $T = 2\pi/\omega = 2\pi\sqrt{L/g}$。高校で暗記した単振り子の周期の公式が、微小角近似と微分方程式から導出されました。

(4) $L$ が大きいと弧が長くなり、同じ角度でも移動距離が増えるため、周期が長くなる。$g$ が大きいと復元力が強くなり、速く引き戻されるため、周期が短くなる。$T = 2\pi\sqrt{L/g}$ に質量 $m$ が含まれないのは、重力加速度 $g$ が質量に依存しないため(重い物体も軽い物体も同じ加速度で落下する)。

採点ポイント
  • 運動方程式を正しく整理して $\ddot{\theta}$ の式を得る(2点)
  • 微小角近似 $\sin\theta \approx \theta$ を適用する(2点)
  • $\omega = \sqrt{g/L}$ を正しく同定する(2点)
  • $T = 2\pi\sqrt{L/g}$ を導出する(2点)
  • $L$, $g$ への依存の物理的説明(2点)