第2章 力と運動の法則

運動方程式を
微分方程式として解く

高校物理では、$F = ma$ から加速度 $a$ を求め、等加速度運動の公式に代入して位置や速度を求めます。 この方法はシンプルで使いやすいですが、力が一定の場合にしか使えません。 空気抵抗のように速度に比例する力や、ばねのように位置に比例する力が働く場合、高校の方法では対処できません。

大学物理では、運動方程式 $F = m(d^2x/dt^2)$ を微分方程式として解くという統一的な方法を使います。 力が一定でも、速度や位置に依存しても、同じ枠組みで運動を求めることができます。 高校で学んだ等加速度運動の公式は、この方法の最も単純な特殊ケースにすぎません。

この記事では、力の種類ごとに運動方程式を実際に解き、 微分方程式というアプローチの汎用性を体験します。

1高校での扱いを確認する

高校物理での力学問題の解法は、概ね次の手順で進みます。

  1. 物体に働く力をすべて書き出す
  2. $F = ma$ から加速度 $a$ を求める
  3. 等加速度運動の公式($v = v_0 + at$、$x = v_0t + \frac{1}{2}at^2$)に代入する

この手順は明快で、多くの入試問題に対応できます。 しかし、この手順が使えるのは加速度が一定の場合に限られます

たとえば次のような状況は、高校の方法では解けません。

  • 空気抵抗のある落下:抵抗力は速度に比例するため、加速度は時間とともに変化する
  • ばねにつながれた物体の運動:復元力は位置に比例するため、加速度が位置に依存する
  • 振り子の運動:復元力が角度の $\sin$ に比例し、一定ではない

これらの問題を扱うためには、等加速度の公式に頼らない、より一般的な方法が必要です。

2大学の視点で何が変わるのか

大学物理では、運動方程式を微分方程式として直接解きます。

高校 vs 大学:運動方程式の解き方
高校:公式に代入する
$F = ma$ → $a$ を求める → 等加速度公式に代入
力が一定の場合のみ。公式の適用範囲外は扱えない。
大学:微分方程式を解く
$m\dfrac{d^2x}{dt^2} = F$ を数学的に解いて $x(t)$ を求める
力が位置や速度に依存しても同じ方法で解ける。
高校:等加速度の公式が「道具」
$v = v_0 + at$, $x = v_0t + \frac{1}{2}at^2$ を暗記して使う。
大学:等加速度の公式は「特殊解」
$F$ = 一定の場合の微分方程式の解にすぎない。
高校:空気抵抗は「無視する」
定量的に扱う方法がないため、問題文で排除される。
大学:空気抵抗も定量的に扱える
$F = -bv$ として微分方程式を解けば、速度の時間変化が分かる。
この記事で得られること

等加速度の公式を微分方程式から導出できる。 $F$ = 一定の場合に運動方程式を積分し、$v = v_0 + at$、$x = v_0t + \frac{1}{2}at^2$ を自分で導けるようになります。

空気抵抗のある運動を解ける。 $F = -bv$(速度に比例する抵抗力)の場合の微分方程式を変数分離法で解き、終端速度の概念を理解します。

ばねの運動方程式を立てられる。 $F = -kx$(位置に比例する復元力)の場合の微分方程式を見て、その解が三角関数(単振動)であることを確認します。

運動方程式の立て方が身につく。 「物体を決める → 力を書く → 座標を設定する → 成分を書き下す」という汎用的な手順を学びます。

3一定力の場合 ─ 等加速度運動の再導出

まず、最も簡単な場合として、力が一定($F$ = 定数)のときを扱います。 これは M-1-2 でも扱った内容の復習です。

運動方程式(力が一定の場合)

$$m\frac{d^2 x}{dt^2} = F \quad (F\text{は定数})$$

初期条件:$t = 0$ で $x = 0$、$v = v_0$

$a = F/m$(定数)とおくと、$\dfrac{d^2x}{dt^2} = a$ です。 これを2回積分すれば $x(t)$ が求まります。

一定力の運動方程式を解く

1回目の積分(加速度 → 速度):

$$\frac{dv}{dt} = a$$

両辺を $t$ で積分すると、

$$v(t) = at + C_1$$

初期条件 $v(0) = v_0$ より $C_1 = v_0$。したがって、

$$v(t) = v_0 + at$$

2回目の積分(速度 → 位置):

$$\frac{dx}{dt} = v_0 + at$$

両辺を $t$ で積分すると、

$$x(t) = v_0 t + \frac{1}{2}at^2 + C_2$$

初期条件 $x(0) = 0$ より $C_2 = 0$。したがって、

$$x(t) = v_0 t + \frac{1}{2}at^2$$

高校で暗記した等加速度運動の2つの公式が、微分方程式の積分から自動的に導出されました。 $\frac{1}{2}$ という係数も、$t^2$ を積分する際に自然に現れるものであることが分かります。

積分定数と初期条件

微分方程式を解くと積分定数($C_1$, $C_2$)が現れます。 これらは初期条件(初速度、初期位置)によって決まります。

2階微分方程式の解には2つの積分定数が現れ、2つの初期条件(初期位置と初速度)で完全に決定されます。 これは「位置と速度を1つの時刻で指定すれば、その後の運動が一意に決まる」ことを意味しています。

4速度に比例する力 ─ 空気抵抗と終端速度

次に、力が速度に依存する場合を考えます。 物体が流体(空気や水)中を運動するとき、速度に比例する抵抗力が働くことがあります。

問題設定

質量 $m$ の物体が重力 $mg$ を受けて落下するとき、速度 $v$ に比例する空気抵抗 $-bv$($b > 0$)が働くとします。 下向きを正とすると、運動方程式は次のようになります。

空気抵抗のある落下の運動方程式

$$m\frac{dv}{dt} = mg - bv$$

$mg$:重力(下向き正)。$-bv$:空気抵抗(速度と逆向き)。$b$:抵抗係数。
力が速度 $v$ に依存しているため、$a$ は一定ではない。等加速度の公式は使えない。

高校の方法では、$a$ が一定でないためお手上げです。 しかし、この微分方程式は変数分離法という手法で解くことができます。

変数分離法による解法

変数分離法で空気抵抗つき落下を解く

運動方程式:$m\dfrac{dv}{dt} = mg - bv$

$v$ と $t$ を分離します:

$$\frac{dv}{mg - bv} = \frac{dt}{m}$$

両辺を積分します($t = 0$ で $v = 0$ とする):

$$\int_0^{v} \frac{dv'}{mg - bv'} = \int_0^{t} \frac{dt'}{m}$$

左辺の積分:$-\dfrac{1}{b}\ln(mg - bv') \Big|_0^{v} = -\dfrac{1}{b}\left[\ln(mg - bv) - \ln(mg)\right] = -\dfrac{1}{b}\ln\dfrac{mg - bv}{mg}$

右辺の積分:$\dfrac{t}{m}$

$$-\frac{1}{b}\ln\frac{mg - bv}{mg} = \frac{t}{m}$$

$$\ln\frac{mg - bv}{mg} = -\frac{b}{m}t$$

$$\frac{mg - bv}{mg} = e^{-\frac{b}{m}t}$$

$v$ について解くと、

$$v(t) = \frac{mg}{b}\left(1 - e^{-\frac{b}{m}t}\right)$$

得られた結果を分析しましょう。

終端速度

$t \to \infty$ のとき、$e^{-(b/m)t} \to 0$ なので、

$$v(\infty) = \frac{mg}{b} \equiv v_{\text{ter}}$$

これが終端速度(terminal velocity)です。 物体が十分長く落下すると、重力と空気抵抗がつりあい、加速度がゼロになります。 それ以降は一定速度 $v_{\text{ter}} = mg/b$ で落下します。

終端速度の物理的な意味

終端速度では $mg = bv_{\text{ter}}$、すなわち重力と空気抵抗がつりあっています。 合力がゼロなので加速度もゼロとなり、速度は変化しなくなります。

雨粒が地上に衝突しても大きな被害を与えないのは、終端速度に達しているためです。 もし空気抵抗がなければ、雨粒は数千メートルの自由落下で非常に高速になります。

落とし穴:「速度に比例する力」は近似である

誤解:「空気抵抗は常に速度に比例する」

正しい理解:速度が小さい場合は $F \propto v$(粘性抵抗)、 速度が大きい場合は $F \propto v^2$(慣性抵抗)と近似されます。 どちらのモデルを使うかは、レイノルズ数と呼ばれる量によって判断します。

この記事では計算が簡単な $F \propto v$ の場合を扱いますが、 実際の物理現象では条件に応じたモデルを選ぶ必要があります。

時定数 $\tau = m/b$

解の中に現れる $e^{-(b/m)t} = e^{-t/\tau}$ の $\tau = m/b$ を時定数と呼びます。

$t = \tau$ のとき、$v = v_{\text{ter}}(1 - e^{-1}) \approx 0.63\,v_{\text{ter}}$。 つまり時定数は「終端速度の約63%に達するまでの時間」を表します。

$t = 3\tau$ で約95%、$t = 5\tau$ で約99%に達するので、 実用的には $3\tau \sim 5\tau$ で終端速度に到達したとみなせます。

5位置に比例する力 ─ ばねと単振動の予告

もう1つ重要な場合として、力が位置に比例する場合を見ておきます。 ばねにつながれた物体に働く復元力がこれに当たります。

ばねの運動方程式

$$m\frac{d^2 x}{dt^2} = -kx$$

$k$:ばね定数。$-kx$:フックの法則による復元力(自然長からの変位 $x$ と逆向き)。
$x$ を2回微分したものが $-x$ に比例するという方程式。

この方程式は「$x(t)$ を2回微分すると、$-(k/m)$ 倍の自分自身に戻る」という条件を要求しています。 $\omega = \sqrt{k/m}$ とおくと、

$$\frac{d^2 x}{dt^2} = -\omega^2 x$$

M-1-1 で見たように、$\sin$ や $\cos$ は2回微分すると符号が反転する関数です。 この方程式の一般解は、

$$x(t) = A\cos(\omega t) + B\sin(\omega t)$$

であることが知られています($A$, $B$ は初期条件で決まる定数)。 これが単振動です。

なぜばねの運動は $\sin$ や $\cos$ になるのか

高校では「ばねにつながれた物体は単振動する」ことを事実として受け入れます。 しかし大学の視点では、これは運動方程式 $m\ddot{x} = -kx$ の数学的な帰結です。

「2回微分すると $-\omega^2$ 倍になる関数」は $\sin(\omega t)$ と $\cos(\omega t)$ しかないため、 ばねの運動は必然的に正弦波になります。物理的な直感ではなく、数学が答えを与えてくれます。

単振動の詳しい解法と物理的な意味については、M-6-2 で改めて扱います。 ここでは「位置に比例する力の運動方程式から、単振動が自然に導かれる」ことを確認しておいてください。

力の種類と運動方程式の解
一定力 $F = $ 定数
$m\ddot{x} = F$
解:$x = v_0t + \frac{1}{2}at^2$(放物線)
高校の等加速度運動
2回積分するだけ。最も簡単なケース。
速度比例力 $F = -bv$
$m\dot{v} = mg - bv$
解:$v = \frac{mg}{b}(1 - e^{-bt/m})$(指数関数)
空気抵抗つき落下
変数分離法で解く。終端速度に漸近。
位置比例力 $F = -kx$
$m\ddot{x} = -kx$
解:$x = A\cos(\omega t + \phi)$(三角関数)
ばねの単振動
特性方程式で解く。M-6-2で詳述。

6運動方程式を立てる手順

力学の問題を解く際に最も重要なのは、正しく運動方程式を立てることです。 方程式さえ正しく立てれば、あとは数学的に解くだけです。 以下の手順は、どのような力学問題にも共通して使えます。

運動方程式を立てる4ステップ

Step 1:注目する物体を決める

どの物体の運動を求めたいのかを明確にします。

Step 2:物体に働く力をすべて書き出す

重力、垂直抗力、摩擦力、張力、弾性力、抵抗力など。漏れなく列挙します。

Step 3:座標系を設定する

正の方向を決めます。運動の方向に合わせて設定すると計算が楽になります。

Step 4:$F = ma$ の各成分を書き下す

各方向について、力の合計 = 質量 $\times$ 加速度 の式を書きます。

具体例:斜面上の物体

傾斜角 $\theta$ の滑らかな斜面上に質量 $m$ の物体が置かれている場合を考えます。

斜面の運動方程式を立てる

Step 1:斜面上の物体に注目

Step 2:働く力は重力 $mg$(鉛直下向き)と垂直抗力 $N$(斜面に垂直、物体から離れる向き)

Step 3:斜面に沿って下向きを正、斜面に垂直で離れる向きを正とする

Step 4:

斜面方向:$ma = mg\sin\theta$

斜面垂直方向:$0 = N - mg\cos\theta$(斜面垂直方向には加速しない)

よって $a = g\sin\theta$、$N = mg\cos\theta$

この手順は高校でも同じですが、大学ではStep 4で微分方程式の形を意識します。 「$ma = mg\sin\theta$」は「$m(d^2x/dt^2) = mg\sin\theta$」と同じことであり、 これを積分すれば位置 $x(t)$ が求まります。

落とし穴:力を書き漏らす、または余分な力を書く

よくある間違い:「物体が動いているから、運動方向に力がある」として 存在しない力を書き加えてしまう

正しいアプローチ:力は物体に接触しているもの(垂直抗力、摩擦、張力、弾性力)と 離れていても働くもの(重力、電磁気力)から生じる。 「動いているから」という理由で力を追加しない。 力がなくても物体は等速直線運動を続ける(第1法則)。

7つながりマップ

運動方程式を微分方程式として解く方法は、力学の全ての問題に共通する基盤です。

  • ← M-1-1 位置・速度・加速度:$v = dx/dt$、$a = d^2x/dt^2$ の定義。運動方程式を微分方程式として書くために必要。
  • ← M-1-2 等加速度運動の3公式を微積分で導く:一定力の場合の積分は、M-1-2の復習。
  • ← M-2-1 ニュートンの運動の3法則:$F = m(d^2x/dt^2)$ の出発点。慣性系で立てることが前提。
  • → M-2-3 いろいろな力:運動方程式の $F$ に代入する具体的な力(摩擦力、張力、弾性力など)を学ぶ。
  • → M-6-2 単振動:$m\ddot{x} = -kx$ の解を詳しく分析し、角振動数、周期、位相の意味を理解する。

📋まとめ

  • 運動方程式 $F = m(d^2x/dt^2)$ は位置 $x(t)$ に関する2階微分方程式。力が与えられれば、初期条件のもとで運動が一意に決定される
  • 一定力の場合($F$ = 定数)を2回積分すると、等加速度運動の公式が導かれる。高校の公式は微分方程式の最も単純な特殊解にすぎない
  • 速度に比例する力($F = -bv$)の場合は変数分離法で解ける。解は指数関数となり、終端速度 $v_{\text{ter}} = mg/b$ に漸近する
  • 位置に比例する力($F = -kx$)の場合、解は三角関数($\sin$, $\cos$)となる。これが単振動の数学的な起源
  • 運動方程式を立てる手順は「①物体を決める ②力を全て書く ③座標系を設定 ④$F = ma$ の成分を書き下す」の4ステップ

確認テスト

Q1. 高校の等加速度運動の公式 $x = v_0t + \frac{1}{2}at^2$ は、運動方程式のどのような条件のもとでの解ですか。

▶ クリックして解答を表示力 $F$(したがって加速度 $a = F/m$)が一定の場合の解。運動方程式 $m(d^2x/dt^2) = F$(定数)を、初期条件 $x(0) = 0$、$v(0) = v_0$ のもとで2回積分した結果。

Q2. 速度に比例する空気抵抗 $-bv$ が働く落下運動の終端速度はいくらですか。また、その物理的意味を説明してください。

▶ クリックして解答を表示$v_{\text{ter}} = mg/b$。終端速度では重力 $mg$ と空気抵抗 $bv$ がつりあい、合力がゼロ。したがって加速度もゼロとなり、それ以降は一定速度で落下する。

Q3. ばねの運動方程式 $m\ddot{x} = -kx$ の解が三角関数($\sin$, $\cos$)になる理由を説明してください。

▶ クリックして解答を表示方程式は「$x$ を2回微分すると $-(k/m)$ 倍になる」ことを要求している。2回微分して定数倍の自分自身に戻る関数は $\sin(\omega t)$ と $\cos(\omega t)$($\omega = \sqrt{k/m}$)だけ。したがって解は必然的に三角関数になる。

Q4. 変数分離法とはどのような方法ですか。

▶ クリックして解答を表示微分方程式の左辺に従属変数(例:$v$)を含む項、右辺に独立変数(例:$t$)を含む項をそれぞれ集めて、両辺を別々に積分する方法。$m\,dv/(mg - bv) = dt$ のように「変数を分離」してから積分する。

10演習問題

運動方程式を微分方程式として解く方法を、問題で実践しましょう。

A 基礎レベル

2-2-1 A 基礎 一定力 積分

質量 $m = 4.0$ kg の物体に一定の力 $F = 12$ N が水平方向に加わっている。初期位置を原点、初速度を $v_0 = 2.0$ m/s とする。

(1) 運動方程式を $d^2x/dt^2$ の形で書け。

(2) $v(t)$ を求めよ。

(3) $x(t)$ を求め、$t = 3.0$ s における位置を計算せよ。

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解答

(1) $4.0\dfrac{d^2x}{dt^2} = 12$ すなわち $\dfrac{d^2x}{dt^2} = 3.0$ m/s$^2$

(2) $v(t) = 2.0 + 3.0t$ m/s

(3) $x(t) = 2.0t + 1.5t^2$ m。$x(3.0) = 6.0 + 13.5 = 19.5$ m

解説

(1) $F = m(d^2x/dt^2)$ に $F = 12$, $m = 4.0$ を代入。

(2) $dv/dt = 3.0$ を積分し、初期条件 $v(0) = 2.0$ を適用。

(3) $dx/dt = 2.0 + 3.0t$ を積分し、初期条件 $x(0) = 0$ を適用。$\frac{1}{2} \times 3.0 = 1.5$ に注意。

B 発展レベル

2-2-2 B 発展 空気抵抗 変数分離法

質量 $m$ の小球が静止状態から自由落下する。速度に比例する空気抵抗 $f = -bv$($b > 0$)が働く。下向きを正とする。

(1) 運動方程式を書け。

(2) 終端速度 $v_{\text{ter}}$ を求めよ。

(3) 変数分離法を用いて、$v(t)$ を求めよ。初期条件は $v(0) = 0$ とする。

(4) $t = m/b$ のとき、速度は終端速度の何 % に達しているか。$e^{-1} \approx 0.37$ として計算せよ。

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解答

(1) $m\dfrac{dv}{dt} = mg - bv$

(2) 終端速度では $mg = bv_{\text{ter}}$。よって $v_{\text{ter}} = mg/b$

(3) $v(t) = \dfrac{mg}{b}\left(1 - e^{-\frac{b}{m}t}\right)$

(4) $v(m/b) = v_{\text{ter}}(1 - e^{-1}) \approx v_{\text{ter}} \times 0.63$。約 63%。

解説

(1) 下向き正なので、重力 $mg$ は正、空気抵抗 $-bv$ は負(上向き)。

(2) 終端速度では加速度ゼロ、つまり $mg - bv_{\text{ter}} = 0$。

(3) $dv/(mg - bv) = dt/m$ と変数分離し、$\int_0^v dv'/(mg - bv') = t/m$ を計算。

(4) $\tau = m/b$ は時定数。$t = \tau$ で $(1 - 1/e) \approx 0.63$、すなわち終端速度の約63%。

採点ポイント
  • 運動方程式の正しい立式(2点)
  • 終端速度の導出(2点)
  • 変数分離法の実行と対数の計算(3点)
  • $t = \tau$ での数値評価(1点)

C 応用レベル

2-2-3 C 応用 ばね 微分方程式 論述

水平な滑らかな床の上で、質量 $m$ の物体がばね定数 $k$ のばねにつながれている。 自然長の位置を原点とし、物体を正の方向に $A$ だけ引いて静かに放す。

(1) 運動方程式を書け。

(2) $x(t) = A\cos(\omega t)$($\omega = \sqrt{k/m}$)がこの方程式の解であることを、実際に微分して確認せよ。

(3) 速度 $v(t)$ を求め、物体が原点を通過するときの速度を求めよ。

(4) この運動で加速度が最大になるのはどの位置か。その理由も述べよ。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

(1) $m\dfrac{d^2x}{dt^2} = -kx$

(2) $x = A\cos(\omega t)$ を2回微分する。$dx/dt = -A\omega\sin(\omega t)$、$d^2x/dt^2 = -A\omega^2\cos(\omega t) = -\omega^2 x$。$\omega^2 = k/m$ なので $m(-\omega^2 x) = -kx$。確かに運動方程式を満たす。

(3) $v(t) = -A\omega\sin(\omega t)$。原点通過時は $x = 0$、つまり $\cos(\omega t) = 0$、$\sin(\omega t) = \pm 1$。よって $v = \pm A\omega = \pm A\sqrt{k/m}$。

(4) 加速度 $a = -(k/m)x$ なので、$|a|$ は $|x|$ が最大のとき最大。すなわち $x = \pm A$(端点、最大変位の位置)で加速度の大きさが最大。ばねが最も伸びた(または縮んだ)位置で復元力が最大であるため。

解説

(2) 解の検証は「候補を代入して方程式を満たすか確認する」方法。微分方程式を解けなくても、解が正しいことは確認できます。

(3) 原点は自然長の位置で、ばねの力がゼロの位置です。ここで速度が最大になります。

(4) 端点 $x = \pm A$ では速度はゼロ(一瞬静止)、加速度は最大。原点 $x = 0$ では速度は最大、加速度はゼロ。速度と加速度が「逆」の振る舞いをする点が単振動の特徴です。

採点ポイント
  • 運動方程式の正しい立式(1点)
  • $\cos(\omega t)$ の2回微分を正しく計算(3点)
  • 方程式を満たすことの確認(2点)
  • 原点通過時の速度 $\pm A\omega$ の導出(2点)
  • 加速度最大の位置とその理由(2点)