第2章 力と運動の法則

ニュートンの運動の3法則
─ 厳密な定式化

高校物理では、ニュートンの運動の3法則を「覚えるべきルール」として学びます。 第1法則は慣性の法則、第2法則は $F = ma$、第3法則は作用・反作用の法則。 これらを暗記し、問題に適用するのが高校のアプローチです。

大学物理では、3法則それぞれにより深い意味があることが見えてきます。 第1法則は慣性系という座標系の存在を保証する法則であり、 第2法則は $F = ma$ ではなく運動量の時間変化率 $F = dp/dt$ として定式化されます。 そして第3法則からは、運動量保存則が数学的に証明できます

この記事では、高校で学んだ3法則を大学の視点で再定式化し、 各法則が物理学の体系の中でどのような役割を果たしているかを明確にします。

1高校での扱いを確認する

高校物理では、ニュートンの運動の3法則を次のように学びます。

  • 第1法則(慣性の法則):物体に力が働かないとき、静止している物体は静止し続け、運動している物体は等速直線運動を続ける
  • 第2法則(運動の法則):物体に力 $F$ が働くと、加速度 $a$ が生じる。$F = ma$
  • 第3法則(作用反作用の法則):物体Aが物体Bに力を及ぼすと、Bも同時にAに大きさが等しく向きが反対の力を及ぼす

高校ではこれら3つを「運動の基本ルール」として覚え、問題を解く際の出発点とします。 特に第2法則 $F = ma$ は、力学のほぼ全ての問題で使う中心的な道具です。

この扱い方で入試問題は十分に解けます。 しかし、次のような疑問に答えることは、高校の枠組みでは難しくなります。

  • 第1法則は第2法則で $F = 0$ とした場合に過ぎないのではないか。なぜわざわざ独立した法則として述べるのか
  • $F = ma$ のうち、$m$ が変化する場合(ロケットなど)はどうするのか
  • 作用・反作用の法則と、運動量保存則はどう関係するのか

大学物理では、これらの疑問に明確な答えを与えることができます。

2大学の視点で何が変わるのか

3法則を大学の視点で見直すと、各法則の役割がより明確になります。

高校 vs 大学:ニュートンの3法則
高校:第1法則 = 慣性の性質
「力が働かなければ等速直線運動」という物体の性質を述べたもの。
第2法則の特殊ケース($F = 0$)に見える。
大学:第1法則 = 慣性系の定義
「ニュートンの法則が成り立つ座標系(慣性系)が存在する」という宣言。
第2法則の前提条件を与える、独立した法則。
高校:第2法則 = $F = ma$
力と加速度と質量の関係式。$a = F/m$ として使う。
質量が一定であることが暗黙の前提。
大学:第2法則 = $F = dp/dt$
力は運動量 $p = mv$ の時間変化率。微分方程式として運動を決定する。
質量変化にも対応できる一般的な形。
高校:第3法則 = 作用・反作用
「AがBを押せば、BもAを押す」。力のペアの話。
「つりあい」と混同しやすい。
大学:第3法則 → 運動量保存
第3法則から、外力がない2体系の全運動量が一定であることが証明できる。
保存則の根拠を与える法則。
この記事で得られること

第1法則が独立した法則である理由が分かる。 第1法則は第2法則の特殊ケースではなく、「どの座標系で法則を適用するか」を定める、第2法則の前提条件です。

$F = ma$ より一般的な形を使えるようになる。 $F = dp/dt$ という形を使えば、質量が変化する系も扱えます。質量一定のとき $F = ma$ に帰着するので、高校の公式は特殊ケースです。

運動量保存則を証明できるようになる。 第3法則から出発して、外力のない2体系の全運動量が保存することを、数式で示すことができます。

3法則の体系的な関係が見える。 第1法則が舞台を定め、第2法則が運動の方程式を与え、第3法則が保存則を保証する。この構造が分かります。

では、各法則を順に見ていきましょう。

3第1法則 ─ 慣性系の定義

なぜ第1法則は独立した法則なのか

高校では、第1法則を「力が働かなければ等速直線運動を続ける」と習います。 これは第2法則で $F = 0$ とすれば $a = 0$(等速直線運動)が導けるので、一見すると第2法則の特殊ケースに見えます。

しかし、ここには重要な問題が隠れています。 「等速直線運動」とは、誰から見て等速直線運動なのでしょうか。

たとえば、電車の中で手を離したボールを考えます。

  • 電車が等速で走っているとき:ボールは床に静止して見える(地上からは等速直線運動)
  • 電車がブレーキをかけたとき:ボールは前方に転がって見える(力を加えていないのに)

ブレーキをかけている電車の中では、力を加えていないのにボールが加速します。 つまり、$F = 0$ なのに $a \neq 0$ です。 第2法則 $F = ma$ が成り立っていません。

これは第2法則が間違っているのではなく、 減速中の電車という座標系では、ニュートンの法則がそもそも成り立たないのです。

第1法則の大学での理解

「力が作用しない物体が等速直線運動を行うような座標系(慣性系)が存在する」

第1法則は物体の性質を述べているのではなく、ニュートンの法則が成り立つ座標系の存在を宣言している。 第2法則は慣性系においてのみ成り立つ。

このように、第1法則は第2法則の特殊ケースではなく、 第2法則が適用できる舞台(座標系)を定める法則です。 第1法則がなければ、第2法則をどの座標系で適用すべきかが分かりません。

慣性系と非慣性系

第1法則が成り立つ座標系を慣性系、成り立たない座標系を非慣性系と呼びます。

  • 慣性系の例:地上(近似的に)、等速で走る電車の中
  • 非慣性系の例:加速・減速中の電車の中、回転する遊具の中

非慣性系ではニュートンの法則がそのまま成り立たないため、見かけの力(慣性力)を導入する必要があります。 遠心力やコリオリ力が典型例です。

落とし穴:「第1法則は第2法則の特殊ケース」ではない

誤解:「$F = 0$ を $F = ma$ に代入すれば $a = 0$。だから第1法則は不要」

正しい理解:第2法則 $F = ma$ が成り立つのは慣性系のみ。 「慣性系が存在する」ことを保証するのが第1法則の役割。 第1法則なしでは、第2法則を適用すべき座標系が定まらない。

慣性系は無数に存在する

1つの慣性系に対して等速直線運動する座標系も慣性系です。 地上が慣性系なら、地上に対して一定速度で走る電車の中も慣性系です。 慣性系は1つではなく、無数に存在します。

これは後に学ぶガリレイ変換(M-2-3 以降)と関係しています。 異なる慣性系の間で物理法則の形が変わらないこと(ガリレイの相対性原理)は、 古典力学の重要な性質です。

4第2法則 ─ $F = dp/dt$ という厳密な形

$F = ma$ の限界

高校で学ぶ第2法則の形は $F = ma$ です。 この式は力学の問題を解くうえで非常に便利ですが、暗黙の前提があります。 それは質量 $m$ が一定であることです。

質量が変化する系もあります。 たとえばロケットは燃料を噴射しながら飛ぶので、質量が時々刻々減少します。 このような場合、$F = ma$ をそのまま使うことはできません。

運動量を使った定式化

ニュートンの第2法則のより一般的な形は、運動量 $p = mv$ を使った表現です。

第2法則の厳密な形

$$\boldsymbol{F} = \frac{d\boldsymbol{p}}{dt}$$

力は運動量 $\boldsymbol{p} = m\boldsymbol{v}$ の時間変化率に等しい。 ここで $\boldsymbol{F}$ は物体に働く合力、$\boldsymbol{p}$ は運動量ベクトル。

質量 $m$ が一定の場合にこれがどうなるか確認しましょう。

$F = dp/dt$ から $F = ma$ を導く($m$ 一定の場合)

$p = mv$ なので、

$$F = \frac{dp}{dt} = \frac{d(mv)}{dt}$$

$m$ が一定なら $m$ は微分の外に出せて、

$$F = m\frac{dv}{dt} = ma$$

高校で学んだ $F = ma$ が得られました。

つまり、$F = ma$ は $F = dp/dt$ の特殊な場合(質量一定)です。 大学では、より一般的な $F = dp/dt$ を基本式として使います。

運動方程式は微分方程式である

M-1-1 で学んだように、加速度は位置の2階微分です:$a = d^2x/dt^2$。 したがって、質量一定の場合の第2法則は次のように書けます。

運動方程式(微分方程式としての形)

$$F = m\frac{d^2 x}{dt^2}$$

これは位置 $x(t)$ に関する2階微分方程式。 力 $F$ が与えられたとき、この方程式を解くことで物体の運動 $x(t)$ が決まる。 次の記事(M-2-2)で実際に解く方法を学ぶ。

高校では「$F = ma$ から $a$ を求め、等加速度の公式に代入する」という手順を取りました。 大学では「$F = m(d^2x/dt^2)$ という微分方程式を解く」というアプローチになります。 高校の手順は、力が一定の場合にのみ使える特殊な解法です。

第2法則の本質

第2法則 $F = dp/dt$ は、「力が分かれば運動が決まる」ことを述べています。

力 $F$ が与えられたとき、$F = m(d^2x/dt^2)$ を初期条件のもとで解けば、 物体の位置 $x(t)$ が時刻の関数として完全に決定されます。

これが大学物理の力学における中心的な問題設定です。 「力 → 微分方程式 → 運動」という流れが、全ての力学問題に共通する枠組みです。

5第3法則 ─ 作用反作用と運動量保存

高校での第3法則

高校では、第3法則を「AがBに力を及ぼすと、BもAに同じ大きさで逆向きの力を及ぼす」と学びます。 数式で書けば、

$$\boldsymbol{F}_{A \to B} = -\boldsymbol{F}_{B \to A}$$

この法則は入試でも頻出であり、力のつりあいとの区別が問われます。

落とし穴:作用反作用と力のつりあいを混同しない

誤解:「作用反作用の2力はつりあっているので物体は動かない」

正しい理解:作用反作用の2力は異なる物体に働く。 1つの物体に働く力ではないので「つりあい」の議論に使えない。 つりあいは同じ物体に働く複数の力について議論するもの。

第3法則から運動量保存を証明する

大学物理で重要なのは、第3法則から運動量保存則が証明できることです。 2つの物体が互いに力を及ぼし合い、外力がない場合を考えます。

2体系の運動量保存の証明

物体1と物体2が互いに力を及ぼし合い、外力は働いていないとします。

物体1に関する運動方程式:$\dfrac{d\boldsymbol{p}_1}{dt} = \boldsymbol{F}_{2 \to 1}$

物体2に関する運動方程式:$\dfrac{d\boldsymbol{p}_2}{dt} = \boldsymbol{F}_{1 \to 2}$

両辺を足し合わせます:

$$\frac{d\boldsymbol{p}_1}{dt} + \frac{d\boldsymbol{p}_2}{dt} = \boldsymbol{F}_{2 \to 1} + \boldsymbol{F}_{1 \to 2}$$

左辺は全運動量 $\boldsymbol{P} = \boldsymbol{p}_1 + \boldsymbol{p}_2$ の時間微分です:

$$\frac{d\boldsymbol{P}}{dt} = \boldsymbol{F}_{2 \to 1} + \boldsymbol{F}_{1 \to 2}$$

第3法則より $\boldsymbol{F}_{1 \to 2} = -\boldsymbol{F}_{2 \to 1}$ なので、右辺は $0$ です:

$$\frac{d\boldsymbol{P}}{dt} = \boldsymbol{0}$$

これは全運動量 $\boldsymbol{P}$ が時間的に変化しないこと、つまり運動量が保存することを意味します。

第3法則と運動量保存の関係

高校では運動量保存則を「法則」として独立に学びますが、 実はそれは第2法則と第3法則の帰結です。

第3法則(作用反作用)→ 内力の和がゼロ → 全運動量の時間微分がゼロ → 運動量保存

このように、大学物理では「なぜ運動量が保存するのか」に明確な答えを与えることができます。 暗記すべき独立な法則が減り、より少ない原理からより多くの結果を導けるようになります。

外力がある場合

外力 $\boldsymbol{F}_{\text{ext}}$ がある場合は、$d\boldsymbol{P}/dt = \boldsymbol{F}_{\text{ext}}$ となります。 外力がゼロでなくても、外力の合計がゼロなら運動量は保存します。

たとえば衝突問題で「衝突の瞬間は外力の力積が無視できる」として運動量保存を使うのは、 この結果の応用です(M-4-1 で詳しく扱います)。

6つながりマップ

ニュートンの3法則は力学の全体を支える基盤であり、これ以降のほぼ全ての記事に関係します。

  • ← M-1-1 位置・速度・加速度:速度 $v = dx/dt$、加速度 $a = d^2x/dt^2$ の定義。第2法則の理解に必須。
  • ← M-1-3 ベクトルと成分分解:力や運動量はベクトル。成分ごとに運動方程式を立てる際に使う。
  • → M-2-2 運動方程式を微分方程式として解く:$F = m(d^2x/dt^2)$ を実際に解く方法。一定力、速度比例力、位置比例力の場合を扱う。
  • → M-2-3 いろいろな力:重力、垂直抗力、摩擦力、張力、弾性力など、$F$ に代入する具体的な力の表現。
  • → M-4-1 運動量と力積:第3法則から導いた運動量保存則を、衝突問題に応用する。

📋まとめ

  • 第1法則は「力が働かなければ等速直線運動」という性質の記述ではなく、慣性系の存在を保証する法則である。第2法則が成り立つ座標系を定めている
  • 第2法則の厳密な形は $F = ma$ ではなく $F = dp/dt$(力は運動量の時間変化率)。質量一定のとき $F = ma$ に帰着する
  • $F = m(d^2x/dt^2)$ は位置 $x(t)$ に関する2階微分方程式であり、力が与えられれば運動が完全に決定される
  • 第3法則から、外力のない系では全運動量が保存することが数学的に証明できる
  • 3法則の構造は「第1法則 = 舞台の設定、第2法則 = 方程式の提示、第3法則 = 保存則の保証」であり、それぞれが独立した役割を持つ

確認テスト

Q1. ニュートンの第1法則が第2法則の特殊ケース($F = 0$)ではない理由を説明してください。

▶ クリックして解答を表示第2法則 $F = ma$ は慣性系でのみ成り立つ。しかし「どの座標系が慣性系か」を定めるのが第1法則の役割。第1法則がなければ第2法則を適用する舞台が定まらない。したがって第1法則は第2法則の前提条件であり、特殊ケースではない。

Q2. 第2法則を運動量を使って書くとどうなりますか。また、$F = ma$ はその式からどのような条件で導かれますか。

▶ クリックして解答を表示$F = dp/dt$(力は運動量の時間変化率)。$m$ が一定のとき、$dp/dt = d(mv)/dt = m(dv/dt) = ma$ となるので $F = ma$ が導かれる。

Q3. 外力のない2体系で運動量が保存することを、3法則のどの法則を使って証明しますか。

▶ クリックして解答を表示第2法則(各物体の運動方程式)と第3法則(作用反作用)を使う。各物体の運動方程式を足し合わせ、第3法則より内力の和がゼロになるため、全運動量の時間微分がゼロ、すなわち運動量が保存する。

Q4. 作用反作用の法則と力のつりあいの違いを説明してください。

▶ クリックして解答を表示作用反作用の2力は異なる物体に働く。力のつりあいは同じ物体に働く複数の力の合力がゼロであること。作用反作用の2力は1つの物体について見ると片方しか登場しないので、つりあいの議論には使えない。

9演習問題

ニュートンの3法則の理解を問題で確認しましょう。

A 基礎レベル

2-1-1 A 基礎 運動量 第2法則

質量 $m = 2.0$ kg の物体に一定の力 $F = 6.0$ N が水平方向に作用している。初速度はゼロとする。次の問いに答えよ。

(1) $t = 0$ における運動量 $p_0$ を求めよ。

(2) $F = dp/dt$ を用いて、$t$ 秒後の運動量 $p(t)$ を求めよ。

(3) $p(t) = mv(t)$ を用いて速度 $v(t)$ を求め、$F = ma$ から求めた結果と一致することを確認せよ。

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解答

(1) $p_0 = mv_0 = 2.0 \times 0 = 0$ kg$\cdot$m/s

(2) $F = dp/dt$ より $dp = F\,dt$。両辺を $0$ から $t$ まで積分すると $p(t) - p_0 = Ft$。よって $p(t) = 6.0t$ kg$\cdot$m/s

(3) $v(t) = p(t)/m = 6.0t/2.0 = 3.0t$ m/s。一方 $F = ma$ より $a = 6.0/2.0 = 3.0$ m/s$^2$、$v = at = 3.0t$ m/s。一致する。

解説

$F = dp/dt$ と $F = ma$ は質量一定のとき同じ結果を与えることを、具体的な数値で確認する問題です。 $F = dp/dt$ の形は、力積 $F\Delta t = \Delta p$ と同じ内容を微分の形で述べたものです。

B 発展レベル

2-1-2 B 発展 運動量保存 証明

質量 $m_1$ の物体1と質量 $m_2$ の物体2が一直線上で衝突する。衝突中、物体1が物体2に及ぼす力を $F_{1 \to 2}$ とし、外力はないものとする。

(1) 第3法則を用いて、物体2が物体1に及ぼす力 $F_{2 \to 1}$ を $F_{1 \to 2}$ で表せ。

(2) 物体1、物体2それぞれの運動方程式を $dp/dt$ の形で書け。

(3) (1)(2)を用いて、全運動量 $P = p_1 + p_2$ が保存することを証明せよ。

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解答

(1) $F_{2 \to 1} = -F_{1 \to 2}$

(2) 物体1:$dp_1/dt = F_{2 \to 1}$、物体2:$dp_2/dt = F_{1 \to 2}$

(3) 両式を足すと $d(p_1 + p_2)/dt = F_{2 \to 1} + F_{1 \to 2} = -F_{1 \to 2} + F_{1 \to 2} = 0$。よって $dP/dt = 0$、すなわち $P$ は一定。

解説

本文中の証明を自分で再現する問題です。

ポイントは、第3法則により内力の和がゼロになることです。 外力がなければ全運動量の時間変化率はゼロとなり、運動量が保存します。

この証明は2体系に限らず、$N$ 体系に拡張できます(M-4-1 で扱います)。

採点ポイント
  • 第3法則を正しく適用(2点)
  • 各物体の運動方程式を $dp/dt$ で書く(2点)
  • 2式を足して内力が消えることを示す(3点)
  • $dP/dt = 0$ から保存を結論(1点)

C 応用レベル

2-1-3 C 応用 慣性系 論述

加速度 $A$ で上昇するエレベーター内に質量 $m$ の物体が床の上に置かれている。

(1) 地上(慣性系)から見た運動方程式を立て、床からの垂直抗力 $N$ を求めよ。

(2) エレベーター内の観測者にとって、物体は静止して見える。しかし $N \neq mg$ であることから、この観測者にとってニュートンの第2法則 $F = ma$ はそのまま成り立たないことを説明せよ。

(3) エレベーター内の観測者がニュートンの法則を形式的に成り立たせるために導入する「見かけの力」(慣性力)の大きさと向きを求めよ。

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解答

(1) 地上から見て物体は加速度 $A$ で上昇。鉛直上向きを正として $N - mg = mA$。よって $N = m(g + A)$。

(2) エレベーター内では物体は静止($a = 0$)。ニュートンの第2法則が成り立つなら合力がゼロのはずだが、実際の力は $N - mg = mA \neq 0$。したがって第2法則がそのまま成り立たない。これはエレベーター内が非慣性系であるためである。

(3) 慣性力 $f = -mA$(下向き)を導入すると、エレベーター内では $N - mg - mA = 0$ となり、形式的にニュートンの法則が成立する。

解説

加速するエレベーターは非慣性系の典型例です。

地上(慣性系)で運動方程式を立てれば問題なく解けます。 一方、エレベーター内(非慣性系)で考えると、実在する力だけでは運動方程式が成り立ちません。

これが第1法則の意義です。ニュートンの法則は慣性系でのみ成立し、非慣性系では慣性力という見かけの力を導入して補正する必要があります。

採点ポイント
  • 地上から見た運動方程式を正しく立てる(2点)
  • $N = m(g + A)$ を導出(2点)
  • 非慣性系で合力がゼロにならないことを指摘(2点)
  • 慣性力 $-mA$ の導入と方向の説明(2点)
  • 第1法則(慣性系の概念)と関連づけた説明(2点)