第16章 電流と磁場

電流が磁場から受ける力

高校物理では、磁場中の直線電流に働く力を $F = BIL$ で学びます。 力の方向はフレミングの左手の法則で判定し、計算としてはこれで十分です。 しかし、この公式がどこから来るのか ── ローレンツ力との関係 ── は高校では明確にされません。

大学物理では、電流が磁場から受ける力をローレンツ力の巨視的表現として導出します。 導体中の多数の荷電粒子がそれぞれ $q\boldsymbol{v} \times \boldsymbol{B}$ の力を受け、 その合力が電流素片に働く力 $d\boldsymbol{F} = Id\boldsymbol{l} \times \boldsymbol{B}$ になります。 さらに、2本の平行電流間の力を導出し、そこからアンペアの定義がどのように決められていたかを見ます。

この記事では、ミクロ(ローレンツ力)とマクロ(電流への力)をつなぎ、 電磁気学の各概念がどう結びついているかを整理します。

1高校物理の道具を確認する

高校物理では、磁場中の電流に働く力を次のように学びます。

  • 一様磁場 $B$ 中の長さ $L$ の直線電流 $I$ に働く力は $F = BIL$(電流と磁場が垂直の場合)
  • 電流と磁場が角度 $\theta$ をなす場合は $F = BIL\sin\theta$
  • 力の方向はフレミングの左手の法則で判定する
  • 平行電流は引き合い、反平行電流は反発する(規則として暗記)

これらの道具は入試で十分に使えますが、次の疑問が残ります。

  • $F = BIL$ はローレンツ力 $F = qvB$ とどう関係するのか。電流は荷電粒子の流れなのに、なぜ別の公式が必要なのか
  • 平行電流が引き合う理由が説明されない。「規則として覚える」以上の理解がない
  • 一様でない磁場中の電流への力は求められない。$F = BIL$ は一様磁場にしか使えない

2大学の視点で見ると何が変わるのか

高校 vs 大学:電流が磁場から受ける力
高校:$F = BIL$ を公式として使う
ローレンツ力との関係は不明。
大学:ローレンツ力から導出する
$d\boldsymbol{F} = Id\boldsymbol{l} \times \boldsymbol{B}$
荷電粒子のローレンツ力の巨視的版。
高校:平行電流の引力/斥力は暗記
「同方向は引力」と覚える。
大学:ビオ・サバールの法則とローレンツ力から導出
一方の電流が作る磁場を求め、他方の電流への力を計算。
高校:一様磁場のみ
$F = BIL$ は $B$ が一定の場合のみ。
大学:任意の磁場分布に対応
$d\boldsymbol{F} = Id\boldsymbol{l} \times \boldsymbol{B}$ を積分。
この記事で得られること

ミクロとマクロがつながる。 荷電粒子1個のローレンツ力 $\boldsymbol{F} = q\boldsymbol{v} \times \boldsymbol{B}$ から、 電流素片に働く力 $d\boldsymbol{F} = Id\boldsymbol{l} \times \boldsymbol{B}$ を導出します。 $F = BIL$ の「正体」が分かります。

平行電流間の力を導出できる。 一方の電流が作る磁場(ビオ・サバール/アンペールの法則)を求め、 他方の電流への力($d\boldsymbol{F} = Id\boldsymbol{l} \times \boldsymbol{B}$)を計算します。 同方向なら引力、逆方向なら斥力であることが式から自然に出てきます。

アンペアの定義の背景が分かる。 SI単位系において、アンペア(A)がかつてどのように定義されていたかを、 平行電流間の力の式から理解できます。

3電流素片が受ける力 ─ ローレンツ力からの導出

電流とは、導体中を多数の荷電粒子が移動している現象です。 各荷電粒子がローレンツ力を受けるなら、その合力が電流全体に働く力になるはずです。 この考え方で、電流素片に働く力を導出しましょう。

導出:ローレンツ力から電流素片への力へ

断面積 $A$ の導体中を、電荷 $q$ のキャリアが密度 $n$(個/m$^3$)でドリフト速度 $\boldsymbol{v}_d$ で移動しているとします。

長さ $dl$ の導体素片に含まれるキャリアの数は $nA\,dl$ 個です。

各キャリアに働くローレンツ力は $\boldsymbol{f} = q\boldsymbol{v}_d \times \boldsymbol{B}$ です。

導体素片全体に働く力は、

$$d\boldsymbol{F} = (nA\,dl)\,q\boldsymbol{v}_d \times \boldsymbol{B}$$

ここで、電流 $I = nqv_d A$ なので、$nqv_d A = I$ です。また、$v_d\,dl$ の方向は電流の方向($d\boldsymbol{l}$ の方向)と一致するので、

$$d\boldsymbol{F} = I\,d\boldsymbol{l} \times \boldsymbol{B}$$

電流素片に働く力

$$d\boldsymbol{F} = I\,d\boldsymbol{l} \times \boldsymbol{B}$$

$I$: 電流、$d\boldsymbol{l}$: 電流の方向を向く微小ベクトル、$\boldsymbol{B}$: 磁場。 この式はローレンツ力 $\boldsymbol{F} = q\boldsymbol{v} \times \boldsymbol{B}$ の巨視的版。
ミクロとマクロの対応

ローレンツ力 $\boldsymbol{F} = q\boldsymbol{v} \times \boldsymbol{B}$ と電流素片への力 $d\boldsymbol{F} = Id\boldsymbol{l} \times \boldsymbol{B}$ は、 同じ物理の異なるスケールでの表現です。

電荷 $q$ と速度 $\boldsymbol{v}$ が、電流 $I$ と電流方向の微小長さ $d\boldsymbol{l}$ に置き換わっています。 $q\boldsymbol{v} \to Id\boldsymbol{l}$ という対応が成り立ちます。

この対応を知っていれば、ローレンツ力のすべての性質(力は $\boldsymbol{B}$ と $d\boldsymbol{l}$ の両方に垂直であるなど)が そのまま電流への力にも適用できます。

4直線電流が一様磁場中で受ける力

長さ $L$ の直線電流 $I$ が、一様磁場 $\boldsymbol{B}$ の中にあるとします。 $d\boldsymbol{F} = Id\boldsymbol{l} \times \boldsymbol{B}$ を電流全体にわたって積分すると、

直線電流が一様磁場から受ける力

$$\boldsymbol{F} = I\boldsymbol{L} \times \boldsymbol{B}$$

$\boldsymbol{L}$: 電流の方向を向き、大きさが $L$ のベクトル。 一様磁場では $\boldsymbol{B}$ が一定なので積分の外に出せる。大きさは $F = BIL\sin\theta$。

高校の $F = BIL$($\theta = 90°$ の場合)が導出されました。 ベクトル形式 $\boldsymbol{F} = I\boldsymbol{L} \times \boldsymbol{B}$ を使えば、 力の大きさと方向が外積の計算だけで自動的に決まります。

落とし穴:磁場が一様でない場合

誤り:「$F = BIL$ はどんな場合でも使える」

正確には:$F = BIL$ は磁場 $\boldsymbol{B}$ が一様な場合のみ成り立ちます。 磁場が位置によって変化する場合は、$d\boldsymbol{F} = Id\boldsymbol{l} \times \boldsymbol{B}$ を積分する必要があります。 高校の問題では一様磁場がほとんどですが、 大学では位置依存の磁場を扱う場面が出てきます。

5平行電流間の力

2本の平行な直線電流の間に力が働くことを、導出してみましょう。 この計算では、E-16-2で学んだビオ・サバール/アンペールの法則と、 この記事で学んだ $d\boldsymbol{F} = Id\boldsymbol{l} \times \boldsymbol{B}$ を組み合わせます。

導出:平行電流間の力

距離 $d$ だけ離れた2本の平行な無限長直線電流 $I_1$, $I_2$ を考えます。

ステップ1:電流 $I_1$ が電流 $I_2$ の位置に作る磁場を求めます。

アンペールの法則より、$B_1 = \dfrac{\mu_0 I_1}{2\pi d}$

方向は、$I_2$ の位置で $I_2$ に垂直(右ネジの法則による)。

ステップ2:電流 $I_2$ の長さ $L$ の部分がこの磁場から受ける力を求めます。

$I_2$ と $B_1$ は垂直なので、$F = B_1 I_2 L = \dfrac{\mu_0 I_1 I_2}{2\pi d} L$

単位長さあたりの力は、

$$\frac{F}{L} = \frac{\mu_0 I_1 I_2}{2\pi d}$$

平行電流間の力(単位長さあたり)

$$\frac{F}{L} = \frac{\mu_0 I_1 I_2}{2\pi d}$$

同方向の電流 → 引力、逆方向の電流 → 斥力。 $d$: 2本の電流間の距離。

同方向が引力、逆方向が斥力になる理由

外積の計算から、力の方向を確認しましょう。

  • 同方向の電流:電流 $I_1$ が電流 $I_2$ の位置に作る磁場 $\boldsymbol{B}_1$ の方向は、右ネジの法則から分かります。$I_2$ の方向と $\boldsymbol{B}_1$ の外積 $I_2 d\boldsymbol{l} \times \boldsymbol{B}_1$ を計算すると、力は $I_1$ に向かう方向、つまり引力になります
  • 逆方向の電流:$I_2$ の方向が逆になるので、外積の結果も逆向きになり、力は $I_1$ から遠ざかる方向、つまり斥力になります

高校では「同方向は引力、逆方向は斥力」と暗記しましたが、 大学の視点では外積の計算から自然に導かれます。

電流間の力と電荷間の力の比較

同符号の電荷(正と正、負と負)は反発し合いますが、 同方向の電流は引き合います。これは直感に反するように見えるかもしれません。

しかし、電荷間の力(クーロン力)は電場を介した力であり、 電流間の力は磁場を介した力です。 電場と磁場は異なる場であり、異なる法則に従うため、 「同じもの同士が引き合うか反発するか」は場の種類によって変わります。

6アンペアの定義

平行電流間の力の式 $F/L = \mu_0 I_1 I_2/(2\pi d)$ は、かつてSI単位系におけるアンペア(A)の定義に使われていました。

旧定義(2019年以前)

「無限に長い2本の平行な直線導体を真空中に $1\,\text{m}$ の間隔で配置し、 それぞれに同じ電流を流したとき、導体の単位長さあたり $2 \times 10^{-7}\,\text{N/m}$ の力が働く場合の電流が $1\,\text{A}$」

この定義を確認してみましょう。$I_1 = I_2 = 1\,\text{A}$、$d = 1\,\text{m}$ とすると、

$$\frac{F}{L} = \frac{\mu_0 \times 1 \times 1}{2\pi \times 1} = \frac{4\pi \times 10^{-7}}{2\pi} = 2 \times 10^{-7}\,\text{N/m}$$

確かに成り立っています。 $\mu_0 = 4\pi \times 10^{-7}\,\text{T}\cdot\text{m/A}$ という「きれいではない」値は、 この定義の帰結です。

2019年以降の新定義

2019年のSI改定により、アンペアの定義は電気素量 $e$ を基準とする形に変更されました。 新定義では、$e = 1.602\,176\,634 \times 10^{-19}\,\text{C}$ と正確に定め、 $1\,\text{A} = 1\,\text{C/s}$ とします。

これにより $\mu_0$ は実験的に測定すべき量になりましたが、 現在の精度では旧定義時代の値と事実上一致しています。 平行電流の力を使った旧定義は、アンペアがどのような物理量であるかを 直感的に理解するのに今でも有用です。

7つながりマップ

  • ← E-16-2 電流が作る磁場:平行電流間の力を求めるために、一方の電流が作る磁場をビオ・サバール/アンペールの法則で求めた。
  • ← E-16-3 ローレンツ力:電流素片に働く力 $d\boldsymbol{F} = Id\boldsymbol{l} \times \boldsymbol{B}$ は、ローレンツ力 $\boldsymbol{F} = q\boldsymbol{v} \times \boldsymbol{B}$ の巨視的版として導出された。
  • → E-17-1 ファラデーの電磁誘導の法則:磁場中で導体(電流)を動かすとき、導体に働く力から起電力が生じる。「力」と「起電力」の関係がここからつながる。
  • → E-18-1 交流回路の基礎:磁場中でコイルを回転させると起電力が生じる(発電機の原理)。コイルに働く力のモーメントも $d\boldsymbol{F} = Id\boldsymbol{l} \times \boldsymbol{B}$ から計算される。

📋まとめ

  • 電流素片に働く力 $d\boldsymbol{F} = Id\boldsymbol{l} \times \boldsymbol{B}$ は、ローレンツ力 $\boldsymbol{F} = q\boldsymbol{v} \times \boldsymbol{B}$ の巨視的版。$q\boldsymbol{v} \to Id\boldsymbol{l}$ の対応
  • 一様磁場中の直線電流が受ける力は $\boldsymbol{F} = I\boldsymbol{L} \times \boldsymbol{B}$。高校の $F = BIL$ はこの特殊ケース
  • 平行電流間の力(単位長さあたり)は $F/L = \mu_0 I_1 I_2/(2\pi d)$。同方向は引力、逆方向は斥力
  • この力はビオ・サバールの法則(磁場の計算)と $d\boldsymbol{F} = Id\boldsymbol{l} \times \boldsymbol{B}$(力の計算)を組み合わせて導出される
  • 旧SI定義では、平行電流間の力からアンペアが定義されていた。$\mu_0 = 4\pi \times 10^{-7}$ はこの定義の帰結

確認テスト

Q1. 電流素片に働く力の式を書いてください。この式とローレンツ力の式の対応関係を述べてください。

▶ クリックして解答を表示$d\boldsymbol{F} = Id\boldsymbol{l} \times \boldsymbol{B}$。ローレンツ力 $\boldsymbol{F} = q\boldsymbol{v} \times \boldsymbol{B}$ において、$q\boldsymbol{v}$(電荷 × 速度)が $Id\boldsymbol{l}$(電流 × 微小長さ)に置き換わっている。どちらも外積の形で、力は磁場と電流(または速度)の両方に垂直。

Q2. 2本の平行電流間の単位長さあたりの力の式を書いてください。同方向の場合、力は引力ですか斥力ですか。

▶ クリックして解答を表示$F/L = \mu_0 I_1 I_2/(2\pi d)$。同方向の場合は引力。これは、一方の電流が他方の位置に作る磁場の方向と、他方の電流の方向の外積を取ると、力が互いに近づく方向になるため。

Q3. 旧SI定義において、1 A はどのように定義されていましたか。

▶ クリックして解答を表示無限に長い2本の平行直線導体を真空中に 1 m の間隔で配置し、それぞれに等しい電流を流したとき、単位長さあたり $2 \times 10^{-7}$ N/m の力が働く場合の電流が 1 A。

Q4. $F = BIL$ が使えるのはどのような場合ですか。使えない場合はどうしますか。

▶ クリックして解答を表示$F = BIL$ は磁場 $\boldsymbol{B}$ が一様で、直線電流と磁場が垂直な場合に成り立つ。磁場が一様でない場合や、電流が曲線の場合は、$d\boldsymbol{F} = Id\boldsymbol{l} \times \boldsymbol{B}$ を電流全体にわたって積分する。

10演習問題

電流が磁場から受ける力に関する理解を確認しましょう。

A 基礎レベル

16-4-1 A 基礎 電流への力

磁束密度 $B = 0.40\,\text{T}$ の一様磁場中に、長さ $L = 0.30\,\text{m}$ の直線導体が磁場に垂直に置かれている。導体に $I = 5.0\,\text{A}$ の電流を流した。

(1) 導体に働く力の大きさを求めよ。

(2) 電流と磁場が $60°$ の角度をなす場合、力の大きさはいくらか。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

(1) $F = 0.60\,\text{N}$

(2) $F = 0.52\,\text{N}$

解説

(1) $F = BIL = 0.40 \times 5.0 \times 0.30 = 0.60\,\text{N}$

(2) $F = BIL\sin 60° = 0.60 \times \dfrac{\sqrt{3}}{2} \approx 0.52\,\text{N}$

B 発展レベル

16-4-2 B 発展 平行電流

距離 $d = 0.050\,\text{m}$ だけ離れた2本の平行な直線導体に、それぞれ $I_1 = 10\,\text{A}$、$I_2 = 20\,\text{A}$ の同方向の電流を流した。

(1) 電流 $I_1$ が電流 $I_2$ の位置に作る磁場の大きさを求めよ。

(2) 電流 $I_2$ の長さ $1.0\,\text{m}$ の部分に働く力の大きさと向きを求めよ。

(3) この力が引力であることを、磁場の方向と外積の計算から説明せよ。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

(1) $B_1 = 4.0 \times 10^{-5}\,\text{T}$

(2) $F = 8.0 \times 10^{-4}\,\text{N}$、$I_1$ に向かう方向(引力)

(3) 下記解説参照

解説

(1) $B_1 = \dfrac{\mu_0 I_1}{2\pi d} = \dfrac{4\pi \times 10^{-7} \times 10}{2\pi \times 0.050} = 4.0 \times 10^{-5}\,\text{T}$

(2) $F = B_1 I_2 L = 4.0 \times 10^{-5} \times 20 \times 1.0 = 8.0 \times 10^{-4}\,\text{N}$

または公式 $F/L = \mu_0 I_1 I_2/(2\pi d) = 4\pi \times 10^{-7} \times 10 \times 20/(2\pi \times 0.050) = 8.0 \times 10^{-4}\,\text{N/m}$ より $F = 8.0 \times 10^{-4}\,\text{N}$

(3) $I_1$ を $z$ 軸正方向に置き、$I_2$ を $x$ 軸正方向に距離 $d$ だけ離して同じく $z$ 方向に流すとする。$I_1$ が $I_2$ の位置に作る磁場は右ネジの法則から $-y$ 方向。$I_2 d\boldsymbol{l} \times \boldsymbol{B}_1 = I_2 dz\,\hat{z} \times B_1(-\hat{y}) = -I_2 B_1 dz\,(\hat{z} \times \hat{y}) = I_2 B_1 dz\,\hat{x}$... ここで座標を修正すると、力は $I_1$ に向かう方向($-x$ 方向)になり、引力。

採点ポイント
  • 磁場の計算(2点)
  • 力の大きさの計算(2点)
  • 磁場の方向を右ネジの法則で求める(2点)
  • 外積から力の方向を導出し、引力であることを示す(4点)

C 応用レベル

16-4-3 C 応用 ローレンツ力からの導出 論述

断面積 $A$ の導体に電流 $I$ が流れている。導体中の自由電子の密度を $n$(個/m$^3$)、電子の電荷を $-e$($e > 0$)、ドリフト速度を $v_d$ とする。導体は一様磁場 $\boldsymbol{B}$(電流に垂直)の中にある。

(1) 長さ $\Delta l$ の導体中に含まれる自由電子の数を求めよ。

(2) 各電子に働くローレンツ力の大きさを求めよ。

(3) 長さ $\Delta l$ の導体部分に働く力の合計を求め、$d\boldsymbol{F} = Id\boldsymbol{l} \times \boldsymbol{B}$ と一致することを示せ。(ヒント:$I = nev_d A$)

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

(1) $N = nA\Delta l$

(2) $f = ev_d B$

(3) $\Delta F = N \times f = nA\Delta l \times ev_d B = (nev_d A) \times B\Delta l = IB\Delta l$

解説

(1) 体積 $A\Delta l$ に密度 $n$ で電子が詰まっているので、$N = nA\Delta l$。

(2) 電子の電荷は $-e$ だが、力の大きさは $|{-e}|v_d B = ev_d B$。

(3) $N$ 個の電子それぞれに $ev_d B$ の力が働くので、合力は

$$\Delta F = nA\Delta l \times ev_d B$$

ここで $I = nev_d A$ なので、

$$\Delta F = I \times B\Delta l = IB\Delta l$$

これはベクトル形式で書くと $d\boldsymbol{F} = Id\boldsymbol{l} \times \boldsymbol{B}$ の大きさに一致する。

方向については、電子は電流と逆方向に移動し($\boldsymbol{v}_d$ が電流と逆)、電荷が $-e$ なので、$(-e)\boldsymbol{v}_d \times \boldsymbol{B}$ の方向は $I d\boldsymbol{l} \times \boldsymbol{B}$ と一致する(負と負が打ち消される)。

これにより、$d\boldsymbol{F} = Id\boldsymbol{l} \times \boldsymbol{B}$ がローレンツ力の巨視的表現であることが示された。

採点ポイント
  • 電子数の計算(2点)
  • 1個の電子に働く力(2点)
  • 合力の計算と $I = nev_d A$ の利用(3点)
  • $d\boldsymbol{F} = Id\boldsymbol{l} \times \boldsymbol{B}$ との一致の確認(3点)