高校物理では、コンデンサーの容量を $C = Q/V$ として学び、平行板コンデンサーでは $C = \varepsilon_0 S/d$ という公式を暗記します。
これらの公式は正しく、入試でも十分に使えます。
大学物理では、容量の公式をガウスの法則と電位の定義から導出します。
$C = Q/V$ は容量の定義であり、$C = \varepsilon_0 S/d$ はガウスの法則で電場を求め、電位差を計算した結果として得られる具体例です。
導出の過程を理解すれば、平行板だけでなく球コンデンサーや円筒コンデンサーなど、あらゆる形状の容量を同じ方法で求められるようになります。
この記事では、高校で暗記していた公式がどのような物理から導かれるかを、ステップごとに示します。
高校物理では、コンデンサーについて次のように学びます。
これらの公式を覚えて、回路の問題に当てはめて使います。 ここで、高校の扱いの特徴を整理しておきます。
これらは高校物理の不備ではなく、範囲の制約です。 大学物理では、ガウスの法則という道具を使って、これらの疑問に答えることができます。
大学物理では、コンデンサーの容量をどのように扱うのか、高校との違いを見てみましょう。
$C = Q/V$ が「定義」であることを理解する。 容量は、導体にどれだけ電荷を蓄えられるかを表す量であり、$Q/V$ はその定義式です。形状に依存しません。
$C = \varepsilon_0 S/d$ を自分で導出できるようになる。 ガウスの法則で電場を求め、電位差を計算し、定義に代入する。この3ステップで平行板コンデンサーの容量を導けます。
同じ方法で他の形状の容量も求められることを知る。 球コンデンサーや円筒コンデンサーの容量も、同じ3ステップで導出できます。
まず、電気容量の定義を明確にしておきましょう。
$$C = \frac{Q}{V}$$
この式は容量の定義です。コンデンサーの形状や大きさに関係なく、常に成り立ちます。
容量 $C$ の物理的な意味は、「1 V の電位差をかけたときに蓄えられる電荷の量」です。 $C$ が大きいほど、同じ電圧でもたくさんの電荷を蓄えられます。
混同しやすい点:$C = Q/V$ と $C = \varepsilon_0 S/d$ を同じレベルの「公式」として扱う
正しい理解:$C = Q/V$ はあらゆるコンデンサーに適用できる定義。$C = \varepsilon_0 S/d$ は平行板コンデンサーの場合にのみ成り立つ具体的な結果。後者は前者にガウスの法則の結果を代入して得られるものです。
では、$C = \varepsilon_0 S/d$ がどのように導出されるかを見ていきましょう。
平行板コンデンサーの容量を、3つのステップで導出します。
面積 $S$ の2枚の平行な導体板が距離 $d$ だけ離れて置かれ、一方に $+Q$、他方に $-Q$ の電荷が蓄えられているとします。 極板の面積が十分に大きく、端の効果を無視できるとき、極板間の電場は一様で、極板に垂直な方向を向きます。
面電荷密度 $\sigma = Q/S$ として、ガウスの法則を適用します。 極板の表面に平行な底面を持つ箱型の閉曲面(ガウス面)を考えると、
ガウスの法則:$\displaystyle\oint \vec{E} \cdot d\vec{A} = \frac{Q_{\text{enc}}}{\varepsilon_0}$
極板間の電場は一様で大きさ $E$ なので、ガウス面を通る電束は $EA$($A$はガウス面の底面積)。
ガウス面が囲む電荷は $\sigma A = (Q/S) \cdot A$。
$$EA = \frac{\sigma A}{\varepsilon_0}$$
$$E = \frac{\sigma}{\varepsilon_0} = \frac{Q}{\varepsilon_0 S}$$
一様電場中での電位差は、$V = Ed$ で与えられます。 これは電位の定義 $V = -\int \vec{E} \cdot d\vec{l}$ から、一様電場の場合に $V = Ed$ となるものです。
$$V = Ed = \frac{Q}{\varepsilon_0 S} \cdot d = \frac{Qd}{\varepsilon_0 S}$$
容量の定義 $C = Q/V$ に代入します。
$$C = \frac{Q}{V} = \frac{Q}{\dfrac{Qd}{\varepsilon_0 S}} = \frac{\varepsilon_0 S}{d}$$
$$C = \frac{\varepsilon_0 S}{d}$$
高校で暗記していた $C = \varepsilon_0 S/d$ が、ガウスの法則から導出されました。 この導出を理解していれば、公式を忘れても導き直せます。
あらゆる形状のコンデンサーの容量は、次の同じ3ステップで求められます。
ステップ1:ガウスの法則(または他の方法)で電場 $E$ を求める
ステップ2:電場を積分して電位差 $V$ を求める
ステップ3:$C = Q/V$ に代入する
同じ3ステップを使えば、平行板以外の形状でも容量を求められます。 大学では球コンデンサーと円筒コンデンサーを扱います。
半径 $a$ の導体球と半径 $b$($b > a$)の導体球殻からなるコンデンサーを考えます。 内球に $+Q$、外球殻に $-Q$ の電荷を与えます。
ガウスの法則により、$a < r < b$ の領域での電場は $E = Q/(4\pi\varepsilon_0 r^2)$ です。 電位差は $V = \int_a^b E\,dr = \dfrac{Q}{4\pi\varepsilon_0}\left(\dfrac{1}{a} - \dfrac{1}{b}\right)$ となり、
$$C = \frac{4\pi\varepsilon_0 ab}{b - a}$$
半径 $a$ の円筒導体と半径 $b$ の円筒導体殻(長さ $L$)からなるコンデンサーの容量は、
$$C = \frac{2\pi\varepsilon_0 L}{\ln(b/a)}$$
球コンデンサーで $b \to \infty$ とすると、$C = 4\pi\varepsilon_0 a$ が得られます。 これは孤立した導体球の容量です。「相手の導体が無限遠にある」とみなしたコンデンサーです。
地球の半径($a \approx 6.4 \times 10^6$ m)を代入すると $C \approx 710\,\mu$F です。 日常で使うコンデンサーの容量($\mu$F〜mF)がいかに小さな値か分かります。
コンデンサーの容量は、静電気の知識と回路の知識をつなぐ重要な概念です。
Q1. $C = Q/V$ と $C = \varepsilon_0 S/d$ の違いは何ですか。
Q2. 平行板コンデンサーの容量を導出する3ステップを述べてください。
Q3. 平行板コンデンサーの極板間の距離を半分にすると、容量はどうなりますか。理由も述べてください。
Q4. 球コンデンサーの外球殻の半径を無限大にすると何が得られますか。
容量の定義と導出を、問題で確認しましょう。
容量 $C = 4.0\,\mu\text{F}$ のコンデンサーに $V = 100\,\text{V}$ の電圧をかけた。次の問いに答えよ。
(1) 蓄えられる電荷 $Q$ を求めよ。
(2) 電圧を $200\,\text{V}$ にすると電荷はどうなるか。
(1) $Q = CV = 4.0 \times 10^{-6} \times 100 = 4.0 \times 10^{-4}$ C $= 0.40$ mC
(2) $Q = 4.0 \times 10^{-6} \times 200 = 8.0 \times 10^{-4}$ C $= 0.80$ mC。電圧を2倍にすると電荷も2倍。
$C = Q/V$ は容量の定義。$Q = CV$ と変形して使う。容量 $C$ はコンデンサー固有の値であり、電圧を変えても変化しない。電荷 $Q$ は電圧 $V$ に比例する。
面積 $S = 0.020\,\text{m}^2$、極板間距離 $d = 1.0\,\text{mm}$ の平行板コンデンサーについて、次の問いに答えよ。$\varepsilon_0 = 8.85 \times 10^{-12}\,\text{F/m}$ とする。
(1) ガウスの法則を用いて、極板間の電場 $E$ を面電荷密度 $\sigma$ で表せ。
(2) このコンデンサーの容量 $C$ を求めよ。
(3) $V = 50\,\text{V}$ をかけたときの極板間の電場の大きさを求めよ。
(1) $E = \sigma / \varepsilon_0$
(2) $C = \varepsilon_0 S / d = 8.85 \times 10^{-12} \times 0.020 / (1.0 \times 10^{-3}) = 1.77 \times 10^{-10}\,\text{F} \approx 0.18\,\text{nF}$
(3) $E = V/d = 50 / (1.0 \times 10^{-3}) = 5.0 \times 10^4\,\text{V/m}$
(1) 極板の一方の面に面電荷密度 $\sigma$ が分布している。極板に平行な底面を持つ箱型のガウス面を取ると、ガウスの法則より $EA = \sigma A / \varepsilon_0$、よって $E = \sigma / \varepsilon_0$。
(2) $V = Ed = \sigma d / \varepsilon_0 = Qd / (\varepsilon_0 S)$ より、$C = Q/V = \varepsilon_0 S / d$。数値を代入して計算する。
(3) 一様電場中では $V = Ed$ なので $E = V/d$。
内球の半径 $a$、外球殻の半径 $b$ の球コンデンサーについて、次の問いに答えよ。内球に $+Q$、外球殻に $-Q$ の電荷を与える。
(1) ガウスの法則を用いて、$a < r < b$ の領域の電場 $E(r)$ を求めよ。
(2) 内球と外球殻の間の電位差 $V$ を求めよ。
(3) 容量 $C$ を求めよ。
(4) $b \to \infty$ のとき、$C$ はどうなるか。その物理的意味を述べよ。
(1) $E(r) = \dfrac{Q}{4\pi\varepsilon_0 r^2}$
(2) $V = \dfrac{Q}{4\pi\varepsilon_0}\left(\dfrac{1}{a} - \dfrac{1}{b}\right)$
(3) $C = \dfrac{4\pi\varepsilon_0 ab}{b - a}$
(4) $C = 4\pi\varepsilon_0 a$。孤立した導体球の容量を表す。
(1) 半径 $r$($a < r < b$)の球面をガウス面に取ると、$4\pi r^2 E = Q/\varepsilon_0$ より $E = Q/(4\pi\varepsilon_0 r^2)$。
(2) $V = -\int_b^a E\,dr = \int_a^b \dfrac{Q}{4\pi\varepsilon_0 r^2}\,dr = \dfrac{Q}{4\pi\varepsilon_0}\left[-\dfrac{1}{r}\right]_a^b = \dfrac{Q}{4\pi\varepsilon_0}\left(\dfrac{1}{a} - \dfrac{1}{b}\right)$
(3) $C = Q/V$ に代入して整理する。
(4) $b \to \infty$ で $1/b \to 0$ なので $V \to Q/(4\pi\varepsilon_0 a)$、$C \to 4\pi\varepsilon_0 a$。これは「無限遠を基準電位としたとき、導体球に電荷 $Q$ を与えたときの電位」から求まる容量であり、孤立導体球の容量に対応する。