第14章 コンデンサー

コンデンサーの接続
─ 直列・並列

高校物理では、コンデンサーの並列接続の合成容量を $C = C_1 + C_2$、直列接続を $1/C = 1/C_1 + 1/C_2$ と暗記します。 さらに、抵抗の直列・並列の公式とは逆の形になることも覚える必要があります。

大学物理では、これらの公式を暗記ではなく、$Q = CV$ という定義と回路の基本条件(電荷保存・キルヒホッフの法則)から導出します。 導出の過程を理解すれば、なぜ抵抗とコンデンサーで公式の形が逆になるのかも説明できるようになります。

この記事では、並列接続と直列接続の合成容量を自分で導出し、抵抗との比較から公式が逆になる理由を明らかにします。

1高校での扱いを確認する

高校物理では、コンデンサーの接続について次の公式を学びます。

  • 並列接続:$C = C_1 + C_2$(容量が足し算)
  • 直列接続:$\dfrac{1}{C} = \dfrac{1}{C_1} + \dfrac{1}{C_2}$(容量の逆数が足し算)

これらの公式は正しく、入試でも頻繁に使います。 ここで、高校の扱いの特徴を整理しておきます。

  • なぜ並列で容量が足し算になるかは直感的に説明される。「面積が増えるから」とは言われるが、厳密な導出は行われない
  • なぜ直列で逆数の和になるかは分かりにくい。多くの生徒がこの公式を暗記に頼っている
  • 抵抗の公式と逆の形になる理由は説明されない。「そういうもの」として受け入れるしかない

2大学の視点で何が変わるか

高校 vs 大学:コンデンサーの接続
高校:2つの公式を暗記する
並列 $C = C_1 + C_2$
直列 $1/C = 1/C_1 + 1/C_2$
暗記して使い分ける。
大学:$Q = CV$ と回路の条件から導出
並列:電圧共通 → $Q_{\text{total}} = (C_1+C_2)V$
直列:電荷共通 → $V = Q/C_1 + Q/C_2$
物理的条件から自然に出てくる。
高校:抵抗と公式が逆になることを暗記
「コンデンサーは抵抗と逆」と覚える。
大学:なぜ逆になるか説明できる
$Q = CV$ と $V = RI$ で「共通量」が異なることが原因。
この記事で得られること

並列接続の合成容量を導出できるようになる。 「並列では電圧が共通」という条件と $Q = CV$ から、$C = C_1 + C_2$ を導出します。

直列接続の合成容量を導出できるようになる。 「直列では電荷が共通」という条件から、$1/C = 1/C_1 + 1/C_2$ を導出します。

抵抗の公式と逆になる理由を説明できるようになる。 コンデンサーと抵抗で「何が共通量か」が異なることが原因であると理解します。

3並列接続の導出

容量 $C_1$、$C_2$ の2つのコンデンサーを並列に接続し、電圧 $V$ をかけた場合を考えます。

並列接続の条件:電圧が共通

並列接続では、2つのコンデンサーの両端が同じ2点に接続されています。 したがって、両方のコンデンサーにかかる電圧は同じ $V$ です。

並列接続の合成容量の導出

各コンデンサーに蓄えられる電荷は、$Q = CV$ より、

$$Q_1 = C_1 V, \qquad Q_2 = C_2 V$$

全体の電荷は、

$$Q_{\text{total}} = Q_1 + Q_2 = C_1 V + C_2 V = (C_1 + C_2)V$$

合成容量 $C$ は $Q_{\text{total}} = CV$ を満たすものなので、

$$C = C_1 + C_2$$

並列接続の合成容量

$$C = C_1 + C_2 + \cdots + C_n$$

並列では電圧が共通。電荷が加算されるため、容量も加算される。

導出の鍵は、並列では電圧が共通で、電荷が分配されるという事実です。 各コンデンサーが独立に電荷を蓄えるので、全体の電荷は単純な和になります。

4直列接続の導出

次に、容量 $C_1$、$C_2$ の2つのコンデンサーを直列に接続し、全体に電圧 $V$ をかけた場合を考えます。

直列接続の条件:電荷が共通

直列接続では、2つのコンデンサーの間の導体は外部と接続されていません。 この導体はもともと電気的に中性であり、電荷の出入りがないため、一方の極板に $+Q$ が現れれば、他方に $-Q$ が現れます。 結果として、直列に接続された全てのコンデンサーに蓄えられる電荷は同じ $Q$ になります。

直列接続の合成容量の導出

各コンデンサーにかかる電圧は、$V = Q/C$ より、

$$V_1 = \frac{Q}{C_1}, \qquad V_2 = \frac{Q}{C_2}$$

全体の電圧はキルヒホッフの法則より各電圧の和なので、

$$V = V_1 + V_2 = \frac{Q}{C_1} + \frac{Q}{C_2} = Q\left(\frac{1}{C_1} + \frac{1}{C_2}\right)$$

合成容量 $C$ は $V = Q/C$ を満たすものなので、

$$\frac{1}{C} = \frac{1}{C_1} + \frac{1}{C_2}$$

直列接続の合成容量

$$\frac{1}{C} = \frac{1}{C_1} + \frac{1}{C_2} + \cdots + \frac{1}{C_n}$$

直列では電荷が共通。電圧が加算されるため、容量の逆数が加算される。
落とし穴:直列接続で「電荷が共通」を忘れる

誤解:直列接続でも各コンデンサーの電荷が異なると思ってしまう

正しい理解:直列接続の中間導体は孤立しているため、電荷保存則により全てのコンデンサーの電荷は等しくなる。これは導出の出発点であり、忘れると公式が導けない

5抵抗との比較 ─ なぜ公式が逆になるか

コンデンサーの接続公式は、抵抗の接続公式と「逆の形」をしています。 この理由を明確にしましょう。

直列 並列
抵抗 $R = R_1 + R_2$(加算) $1/R = 1/R_1 + 1/R_2$(逆数の和)
コンデンサー $1/C = 1/C_1 + 1/C_2$(逆数の和) $C = C_1 + C_2$(加算)

この違いの原因は、抵抗とコンデンサーで「何と何の比を取っているか」が逆だからです。

  • 抵抗:$R = V/I$(電圧÷電流)
  • コンデンサー:$C = Q/V$(電荷÷電圧)
公式が逆になる理由

直列接続では、抵抗もコンデンサーも電圧が加算されます。

抵抗の場合:$V = IR$ なので、$V = I(R_1 + R_2)$ → $R$ が加算

コンデンサーの場合:$V = Q/C$ なので、$V = Q(1/C_1 + 1/C_2)$ → $1/C$ が加算

$R$ は「電圧/電流」であり分子に電圧がある。$C$ は「電荷/電圧」であり分母に電圧がある。 電圧が加算される直列接続では、分子に電圧がある $R$ は単純に加算され、分母に電圧がある $C$ は逆数が加算される。 これが「逆の形」になる理由です。

コンダクタンスを使うと統一的に見える

抵抗の逆数をコンダクタンス $G = 1/R = I/V$ と定義すると、コンダクタンスの並列合成は $G = G_1 + G_2$ です。 これはコンデンサーの並列合成 $C = C_1 + C_2$ と同じ形です。

実は、$G$ と $C$ はどちらも「電圧を分母に置く量」であり、並列で加算されるのは自然なことです。 逆に、$R$ と $1/C$(エラスタンス)はどちらも「電圧を分子に置く量」であり、直列で加算されます。

6つながりマップ

  • ← E-14-1 コンデンサーの容量:容量の定義 $C = Q/V$ が導出の出発点。平行板コンデンサーの容量をガウスの法則から導出した。
  • → E-14-3 静電エネルギー:合成容量を使って、接続されたコンデンサー系のエネルギーを計算する。
  • → E-15-1 オームの法則:$V = RI$ と $Q = CV$ の構造的な類似性を、抵抗回路の文脈でさらに深く理解する。
  • 関連:E-15-2 キルヒホッフの法則:直列接続の導出で使った「電圧の和」はキルヒホッフの電圧則そのもの。

📋まとめ

  • 並列接続では電圧が共通。電荷が加算されるため $C = C_1 + C_2$
  • 直列接続では電荷が共通(電荷保存則)。電圧が加算されるため $1/C = 1/C_1 + 1/C_2$
  • 抵抗と公式が逆になるのは、$R = V/I$ と $C = Q/V$ で電圧が分子にあるか分母にあるかが異なるため
  • 導出の鍵は、接続における物理的条件(何が共通で何が加算されるか)を正しく把握すること
  • 公式を暗記する代わりに、$Q = CV$ と回路の条件からいつでも導出できる

確認テスト

Q1. コンデンサーの並列接続で共通になるのは電圧と電荷のどちらですか。

▶ クリックして解答を表示電圧。並列接続ではコンデンサーの両端が同じ2点に接続されているため、電圧が共通になる。各コンデンサーの電荷は一般に異なる。

Q2. コンデンサーの直列接続で全てのコンデンサーの電荷が等しくなる理由を述べてください。

▶ クリックして解答を表示直列接続の中間の導体は外部と接続されておらず、電荷の出入りがない。もともと電気的に中性であるため、電荷保存則により一方の極板に $+Q$ が現れれば他方に $-Q$ が現れ、結果として全てのコンデンサーの電荷が等しくなる。

Q3. 抵抗の直列合成は $R = R_1 + R_2$、コンデンサーの直列合成は $1/C = 1/C_1 + 1/C_2$ です。なぜ形が異なりますか。

▶ クリックして解答を表示直列接続では電圧が加算される。$R = V/I$ は分子に電圧があるため $R$ が直接加算される。$C = Q/V$ は分母に電圧があるため、$1/C$ が加算される。電圧の位置(分子か分母か)が異なることが原因。

Q4. $C_1 = 3\,\mu\text{F}$、$C_2 = 6\,\mu\text{F}$ を直列接続した場合の合成容量を求めてください。

▶ クリックして解答を表示$1/C = 1/3 + 1/6 = 3/6 = 1/2$ より $C = 2\,\mu\text{F}$。直列接続では合成容量は最も小さいコンデンサーの容量よりも小さくなる。

9演習問題

接続の導出と計算を、問題で確認しましょう。

A 基礎レベル

14-2-1 A 基礎 並列接続

$C_1 = 2.0\,\mu\text{F}$、$C_2 = 3.0\,\mu\text{F}$、$C_3 = 5.0\,\mu\text{F}$ の3つのコンデンサーを並列に接続し、$V = 12\,\text{V}$ の電圧をかけた。次の問いに答えよ。

(1) 合成容量 $C$ を求めよ。

(2) 全体に蓄えられる電荷 $Q_{\text{total}}$ を求めよ。

(3) $C_1$ に蓄えられる電荷 $Q_1$ を求めよ。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

(1) $C = 2.0 + 3.0 + 5.0 = 10.0\,\mu\text{F}$

(2) $Q_{\text{total}} = CV = 10.0 \times 10^{-6} \times 12 = 1.2 \times 10^{-4}\,\text{C} = 120\,\mu\text{C}$

(3) $Q_1 = C_1 V = 2.0 \times 10^{-6} \times 12 = 24\,\mu\text{C}$

解説

並列接続では電圧が共通で、各コンデンサーが独立に電荷を蓄える。合成容量は単純な和になる。各コンデンサーの電荷は容量に比例する。

B 発展レベル

14-2-2 B 発展 直列接続 導出

$C_1 = 4.0\,\mu\text{F}$、$C_2 = 6.0\,\mu\text{F}$ の2つのコンデンサーを直列に接続し、全体に $V = 24\,\text{V}$ の電圧をかけた。次の問いに答えよ。

(1) 直列接続の合成容量の公式を、$Q = CV$ と電荷保存則を用いて導出せよ。

(2) 合成容量 $C$ と各コンデンサーに蓄えられる電荷 $Q$ を求めよ。

(3) 各コンデンサーにかかる電圧 $V_1$、$V_2$ を求めよ。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

(1) 直列接続では電荷が共通($Q$)。$V = V_1 + V_2 = Q/C_1 + Q/C_2 = Q(1/C_1 + 1/C_2)$。$V = Q/C$ より $1/C = 1/C_1 + 1/C_2$。

(2) $1/C = 1/4.0 + 1/6.0 = 5/12$ より $C = 2.4\,\mu\text{F}$。$Q = CV = 2.4 \times 10^{-6} \times 24 = 57.6\,\mu\text{C}$。

(3) $V_1 = Q/C_1 = 57.6/4.0 = 14.4\,\text{V}$、$V_2 = Q/C_2 = 57.6/6.0 = 9.6\,\text{V}$

解説

直列接続では電荷が共通であることが導出の出発点。電圧の和 $V_1 + V_2 = 14.4 + 9.6 = 24\,\text{V}$ が全体の電圧に一致することを確認できる。

容量が小さいコンデンサーにより大きな電圧がかかることに注意。$C = Q/V$ より、同じ $Q$ に対して $C$ が小さいほど $V$ が大きくなる。

採点ポイント
  • 電荷保存則を正しく述べる(2点)
  • 公式の導出過程(3点)
  • 数値計算の正確さ(3点)

C 応用レベル

14-2-3 C 応用 直並列混合 論述

$C_1 = 2.0\,\mu\text{F}$ と $C_2 = 4.0\,\mu\text{F}$ を並列に接続したものを、$C_3 = 3.0\,\mu\text{F}$ と直列に接続した。全体に $V = 18\,\text{V}$ をかけた。次の問いに答えよ。

(1) 全体の合成容量 $C$ を求めよ。

(2) $C_3$ にかかる電圧と $C_1$、$C_2$ にかかる電圧をそれぞれ求めよ。

(3) $C_1$ と $C_2$ に蓄えられる電荷をそれぞれ求めよ。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

(1) $C_1$ と $C_2$ の並列合成 $C_{12} = 2.0 + 4.0 = 6.0\,\mu\text{F}$。$C_{12}$ と $C_3$ の直列合成:$1/C = 1/6.0 + 1/3.0 = 3/6.0 = 1/2.0$ より $C = 2.0\,\mu\text{F}$。

(2) 直列部分の電荷:$Q = CV = 2.0 \times 10^{-6} \times 18 = 36\,\mu\text{C}$。$V_3 = Q/C_3 = 36/3.0 = 12\,\text{V}$。$V_{12} = Q/C_{12} = 36/6.0 = 6.0\,\text{V}$。

(3) $Q_1 = C_1 V_{12} = 2.0 \times 6.0 = 12\,\mu\text{C}$。$Q_2 = C_2 V_{12} = 4.0 \times 6.0 = 24\,\mu\text{C}$。

解説

まず並列部分を合成し、次に直列部分を合成する。直列部分では電荷が共通、並列部分では電圧が共通であることを使い分ける。

確認:$Q_1 + Q_2 = 12 + 24 = 36\,\mu\text{C}$ は $C_3$ の電荷と一致。$V_3 + V_{12} = 12 + 6 = 18\,\text{V}$ は全体の電圧と一致。

採点ポイント
  • 並列→直列の順で合成容量を求める(3点)
  • 直列部分の電荷共通条件の適用(2点)
  • 並列部分の電圧共通条件の適用(2点)
  • 検算による確認(1点)