高校物理では、コンデンサーの並列接続の合成容量を $C = C_1 + C_2$、直列接続を $1/C = 1/C_1 + 1/C_2$ と暗記します。
さらに、抵抗の直列・並列の公式とは逆の形になることも覚える必要があります。
大学物理では、これらの公式を暗記ではなく、$Q = CV$ という定義と回路の基本条件(電荷保存・キルヒホッフの法則)から導出します。
導出の過程を理解すれば、なぜ抵抗とコンデンサーで公式の形が逆になるのかも説明できるようになります。
この記事では、並列接続と直列接続の合成容量を自分で導出し、抵抗との比較から公式が逆になる理由を明らかにします。
高校物理では、コンデンサーの接続について次の公式を学びます。
これらの公式は正しく、入試でも頻繁に使います。 ここで、高校の扱いの特徴を整理しておきます。
並列接続の合成容量を導出できるようになる。 「並列では電圧が共通」という条件と $Q = CV$ から、$C = C_1 + C_2$ を導出します。
直列接続の合成容量を導出できるようになる。 「直列では電荷が共通」という条件から、$1/C = 1/C_1 + 1/C_2$ を導出します。
抵抗の公式と逆になる理由を説明できるようになる。 コンデンサーと抵抗で「何が共通量か」が異なることが原因であると理解します。
容量 $C_1$、$C_2$ の2つのコンデンサーを並列に接続し、電圧 $V$ をかけた場合を考えます。
並列接続では、2つのコンデンサーの両端が同じ2点に接続されています。 したがって、両方のコンデンサーにかかる電圧は同じ $V$ です。
各コンデンサーに蓄えられる電荷は、$Q = CV$ より、
$$Q_1 = C_1 V, \qquad Q_2 = C_2 V$$
全体の電荷は、
$$Q_{\text{total}} = Q_1 + Q_2 = C_1 V + C_2 V = (C_1 + C_2)V$$
合成容量 $C$ は $Q_{\text{total}} = CV$ を満たすものなので、
$$C = C_1 + C_2$$
$$C = C_1 + C_2 + \cdots + C_n$$
導出の鍵は、並列では電圧が共通で、電荷が分配されるという事実です。 各コンデンサーが独立に電荷を蓄えるので、全体の電荷は単純な和になります。
次に、容量 $C_1$、$C_2$ の2つのコンデンサーを直列に接続し、全体に電圧 $V$ をかけた場合を考えます。
直列接続では、2つのコンデンサーの間の導体は外部と接続されていません。 この導体はもともと電気的に中性であり、電荷の出入りがないため、一方の極板に $+Q$ が現れれば、他方に $-Q$ が現れます。 結果として、直列に接続された全てのコンデンサーに蓄えられる電荷は同じ $Q$ になります。
各コンデンサーにかかる電圧は、$V = Q/C$ より、
$$V_1 = \frac{Q}{C_1}, \qquad V_2 = \frac{Q}{C_2}$$
全体の電圧はキルヒホッフの法則より各電圧の和なので、
$$V = V_1 + V_2 = \frac{Q}{C_1} + \frac{Q}{C_2} = Q\left(\frac{1}{C_1} + \frac{1}{C_2}\right)$$
合成容量 $C$ は $V = Q/C$ を満たすものなので、
$$\frac{1}{C} = \frac{1}{C_1} + \frac{1}{C_2}$$
$$\frac{1}{C} = \frac{1}{C_1} + \frac{1}{C_2} + \cdots + \frac{1}{C_n}$$
誤解:直列接続でも各コンデンサーの電荷が異なると思ってしまう
正しい理解:直列接続の中間導体は孤立しているため、電荷保存則により全てのコンデンサーの電荷は等しくなる。これは導出の出発点であり、忘れると公式が導けない
コンデンサーの接続公式は、抵抗の接続公式と「逆の形」をしています。 この理由を明確にしましょう。
| 直列 | 並列 | |
|---|---|---|
| 抵抗 | $R = R_1 + R_2$(加算) | $1/R = 1/R_1 + 1/R_2$(逆数の和) |
| コンデンサー | $1/C = 1/C_1 + 1/C_2$(逆数の和) | $C = C_1 + C_2$(加算) |
この違いの原因は、抵抗とコンデンサーで「何と何の比を取っているか」が逆だからです。
直列接続では、抵抗もコンデンサーも電圧が加算されます。
抵抗の場合:$V = IR$ なので、$V = I(R_1 + R_2)$ → $R$ が加算
コンデンサーの場合:$V = Q/C$ なので、$V = Q(1/C_1 + 1/C_2)$ → $1/C$ が加算
$R$ は「電圧/電流」であり分子に電圧がある。$C$ は「電荷/電圧」であり分母に電圧がある。 電圧が加算される直列接続では、分子に電圧がある $R$ は単純に加算され、分母に電圧がある $C$ は逆数が加算される。 これが「逆の形」になる理由です。
抵抗の逆数をコンダクタンス $G = 1/R = I/V$ と定義すると、コンダクタンスの並列合成は $G = G_1 + G_2$ です。 これはコンデンサーの並列合成 $C = C_1 + C_2$ と同じ形です。
実は、$G$ と $C$ はどちらも「電圧を分母に置く量」であり、並列で加算されるのは自然なことです。 逆に、$R$ と $1/C$(エラスタンス)はどちらも「電圧を分子に置く量」であり、直列で加算されます。
Q1. コンデンサーの並列接続で共通になるのは電圧と電荷のどちらですか。
Q2. コンデンサーの直列接続で全てのコンデンサーの電荷が等しくなる理由を述べてください。
Q3. 抵抗の直列合成は $R = R_1 + R_2$、コンデンサーの直列合成は $1/C = 1/C_1 + 1/C_2$ です。なぜ形が異なりますか。
Q4. $C_1 = 3\,\mu\text{F}$、$C_2 = 6\,\mu\text{F}$ を直列接続した場合の合成容量を求めてください。
接続の導出と計算を、問題で確認しましょう。
$C_1 = 2.0\,\mu\text{F}$、$C_2 = 3.0\,\mu\text{F}$、$C_3 = 5.0\,\mu\text{F}$ の3つのコンデンサーを並列に接続し、$V = 12\,\text{V}$ の電圧をかけた。次の問いに答えよ。
(1) 合成容量 $C$ を求めよ。
(2) 全体に蓄えられる電荷 $Q_{\text{total}}$ を求めよ。
(3) $C_1$ に蓄えられる電荷 $Q_1$ を求めよ。
(1) $C = 2.0 + 3.0 + 5.0 = 10.0\,\mu\text{F}$
(2) $Q_{\text{total}} = CV = 10.0 \times 10^{-6} \times 12 = 1.2 \times 10^{-4}\,\text{C} = 120\,\mu\text{C}$
(3) $Q_1 = C_1 V = 2.0 \times 10^{-6} \times 12 = 24\,\mu\text{C}$
並列接続では電圧が共通で、各コンデンサーが独立に電荷を蓄える。合成容量は単純な和になる。各コンデンサーの電荷は容量に比例する。
$C_1 = 4.0\,\mu\text{F}$、$C_2 = 6.0\,\mu\text{F}$ の2つのコンデンサーを直列に接続し、全体に $V = 24\,\text{V}$ の電圧をかけた。次の問いに答えよ。
(1) 直列接続の合成容量の公式を、$Q = CV$ と電荷保存則を用いて導出せよ。
(2) 合成容量 $C$ と各コンデンサーに蓄えられる電荷 $Q$ を求めよ。
(3) 各コンデンサーにかかる電圧 $V_1$、$V_2$ を求めよ。
(1) 直列接続では電荷が共通($Q$)。$V = V_1 + V_2 = Q/C_1 + Q/C_2 = Q(1/C_1 + 1/C_2)$。$V = Q/C$ より $1/C = 1/C_1 + 1/C_2$。
(2) $1/C = 1/4.0 + 1/6.0 = 5/12$ より $C = 2.4\,\mu\text{F}$。$Q = CV = 2.4 \times 10^{-6} \times 24 = 57.6\,\mu\text{C}$。
(3) $V_1 = Q/C_1 = 57.6/4.0 = 14.4\,\text{V}$、$V_2 = Q/C_2 = 57.6/6.0 = 9.6\,\text{V}$
直列接続では電荷が共通であることが導出の出発点。電圧の和 $V_1 + V_2 = 14.4 + 9.6 = 24\,\text{V}$ が全体の電圧に一致することを確認できる。
容量が小さいコンデンサーにより大きな電圧がかかることに注意。$C = Q/V$ より、同じ $Q$ に対して $C$ が小さいほど $V$ が大きくなる。
$C_1 = 2.0\,\mu\text{F}$ と $C_2 = 4.0\,\mu\text{F}$ を並列に接続したものを、$C_3 = 3.0\,\mu\text{F}$ と直列に接続した。全体に $V = 18\,\text{V}$ をかけた。次の問いに答えよ。
(1) 全体の合成容量 $C$ を求めよ。
(2) $C_3$ にかかる電圧と $C_1$、$C_2$ にかかる電圧をそれぞれ求めよ。
(3) $C_1$ と $C_2$ に蓄えられる電荷をそれぞれ求めよ。
(1) $C_1$ と $C_2$ の並列合成 $C_{12} = 2.0 + 4.0 = 6.0\,\mu\text{F}$。$C_{12}$ と $C_3$ の直列合成:$1/C = 1/6.0 + 1/3.0 = 3/6.0 = 1/2.0$ より $C = 2.0\,\mu\text{F}$。
(2) 直列部分の電荷:$Q = CV = 2.0 \times 10^{-6} \times 18 = 36\,\mu\text{C}$。$V_3 = Q/C_3 = 36/3.0 = 12\,\text{V}$。$V_{12} = Q/C_{12} = 36/6.0 = 6.0\,\text{V}$。
(3) $Q_1 = C_1 V_{12} = 2.0 \times 6.0 = 12\,\mu\text{C}$。$Q_2 = C_2 V_{12} = 4.0 \times 6.0 = 24\,\mu\text{C}$。
まず並列部分を合成し、次に直列部分を合成する。直列部分では電荷が共通、並列部分では電圧が共通であることを使い分ける。
確認:$Q_1 + Q_2 = 12 + 24 = 36\,\mu\text{C}$ は $C_3$ の電荷と一致。$V_3 + V_{12} = 12 + 6 = 18\,\text{V}$ は全体の電圧と一致。