第I編 力学 ─ 見通し

すべての力学は「$m\ddot{x} = F$ を解く」に帰着する。

1この編で学ぶこと

力学は物理学の基盤です。高校では公式を暗記し、場面に応じて適用することで問題を解きます。等加速度運動の3公式、力積と運動量の関係、エネルギー保存則――これらを正しく使い分ける力が求められます。

大学では、これらすべてが微分方程式によって統一的に記述されます。運動方程式 $m\ddot{x} = F$ という一つの式を立て、それを解く。等加速度運動も、単振動も、円運動も、すべて同じ手続きで扱えます。

この編の核心

力学のあらゆる問題は、「力 $F$ を特定し、$m\ddot{x} = F$ を解く」という一つの方針に帰着します。高校で覚えた個別の公式は、この微分方程式の特殊解として自然に導かれます。

2高校との主な違い

高校 → 大学で何が変わるか
テーマ 高校 大学
速度・加速度 「変化の割合」として計算 微分 $v = dx/dt$, $a = d^2x/dt^2$
等加速度の3公式 暗記して適用 $a = \text{const}$ を積分して導出
力学的エネルギー保存 天下りの法則として学ぶ 運動方程式から数学的に証明
円運動・単振動 個別の公式で対処 微分方程式の解として統一

3必要な数学

この編で使う数学は、微分積分1階・2階常微分方程式の3つです。いずれも各記事の中で必要になった時点で導入しますので、事前に学んでおく必要はありません。

特に、第1章で微分を、第2章で微分方程式を、第5章で線積分を扱います。数学は物理の文脈の中で学ぶほうが意味をつかみやすいため、本書では数学と物理を並行して進めます。

4章の見通し(6章21記事)

第1章
運動の表し方(3記事)
微分で速度・加速度を再定義し、位置・速度・加速度の関係を統一的に記述する。
第2章
力と運動の法則(4記事)
運動方程式を微分方程式として定式化し、さまざまな力の下での運動を解く。
第3章
力のつりあいと剛体(3記事)
力をベクトルとして扱い、モーメントの概念で剛体の静力学を理解する。
第4章
運動量と力積(3記事)
運動方程式の積分形として運動量保存則を導き、衝突問題を体系的に扱う。
第5章
仕事とエネルギー(4記事)
仕事を線積分で定義し、ポテンシャルエネルギーの概念を導入する。
第6章
円運動と万有引力(4記事)
微分方程式で円運動を記述し、逆二乗則からケプラーの法則を導出する。