高校物理では、コンデンサーに蓄えられるエネルギーを $U = \frac{1}{2}CV^2 = \frac{1}{2}QV = Q^2/(2C)$ として学びます。
これらの公式は正しいですが、なぜ $\frac{1}{2}$ が現れるのか、エネルギーは具体的にどこに蓄えられているのかは説明されません。
大学物理では、静電エネルギーを充電過程の仕事の積分として導出します。
$\frac{1}{2}$ は積分の結果として自然に現れます。
さらに、エネルギーは電荷そのものにではなく、電場の中に分布しているという見方を導入します。
これがエネルギー密度 $u = \frac{1}{2}\varepsilon_0 E^2$ の概念です。
この記事では、エネルギーの公式を導出し、エネルギーが「どこに」あるかという問いに答えます。
高校物理では、コンデンサーに蓄えられるエネルギー(静電エネルギー)を次のように学びます。
これらは $Q = CV$ を使って互いに変換できるので、本質的には同じ式の3つの表現です。 高校の扱いの特徴を整理します。
$\frac{1}{2}$ の由来を理解する。 充電過程で微小電荷 $dq$ を運ぶ仕事を積分すると、$\frac{1}{2}$ は $\int_0^Q q\,dq = Q^2/2$ から自然に出てきます。
エネルギー密度の概念を獲得する。 電場が存在する場所にはエネルギーが分布しており、その密度は $u = \frac{1}{2}\varepsilon_0 E^2$ です。
エネルギーの所在について答えられるようになる。 エネルギーは電荷ではなく電場に蓄えられている、という大学物理の基本的な見方を理解します。
コンデンサーを充電するとき、電荷を一方の極板からもう一方に運ぶ仕事が必要です。 この仕事の総量が静電エネルギーになります。
容量 $C$ のコンデンサーが、充電の途中で電荷 $q$ を蓄えている状態を考えます。 このときの極板間の電位差は $V = q/C$ です。
ここに微小な電荷 $dq$ を追加で運ぶのに必要な仕事は、
$$dW = V\,dq = \frac{q}{C}\,dq$$
充電開始($q = 0$)から最終的な電荷 $Q$ まで積分すると、
$$U = W = \int_0^Q \frac{q}{C}\,dq = \frac{1}{C}\int_0^Q q\,dq = \frac{1}{C} \cdot \frac{Q^2}{2} = \frac{Q^2}{2C}$$
$Q = CV$ を代入すると、
$$U = \frac{Q^2}{2C} = \frac{(CV)^2}{2C} = \frac{1}{2}CV^2$$
また、$Q = CV$ より $U = \frac{1}{2}QV$ も得られます。
$$U = \frac{Q^2}{2C} = \frac{1}{2}CV^2 = \frac{1}{2}QV$$
$\frac{1}{2}$ は $\int_0^Q q\,dq = Q^2/2$ という積分の結果です。 充電の初めは電位差がほぼゼロなので仕事はほとんどかからず、 充電が進むにつれて電位差が大きくなり仕事が増えていきます。 この「だんだん大変になる」効果が $\frac{1}{2}$ として現れています。
誤:電荷 $Q$ を電位差 $V$ で運ぶから $U = QV$
正:充電中、電位差は $0$ から $V$ まで増加する。最後の電位差 $V$ で全ての電荷を運んだわけではない。平均の電位差は $V/2$ なので $U = Q \times V/2 = \frac{1}{2}QV$
静電エネルギーの公式を、電場を使って書き換えてみましょう。
平行板コンデンサーでは、$C = \varepsilon_0 S/d$、$V = Ed$ です。 これらを $U = \frac{1}{2}CV^2$ に代入します。
$$U = \frac{1}{2}CV^2 = \frac{1}{2} \cdot \frac{\varepsilon_0 S}{d} \cdot (Ed)^2 = \frac{1}{2}\varepsilon_0 E^2 \cdot Sd$$
ここで $Sd$ は極板間の体積です。したがって、
$$U = \frac{1}{2}\varepsilon_0 E^2 \times (\text{体積})$$
これを「体積あたりのエネルギー」と解釈すると、
$$u = \frac{U}{Sd} = \frac{1}{2}\varepsilon_0 E^2$$
$$u = \frac{1}{2}\varepsilon_0 E^2$$
この式は、平行板コンデンサーの場合に導出しましたが、実はあらゆる電場に対して成り立つ一般的な結果です。 一般の場合、全エネルギーは空間全体の積分で与えられます。
$$U = \int \frac{1}{2}\varepsilon_0 E^2 \,dV$$
(ここで $dV$ は体積要素で、電位差の $V$ とは別です)
高校物理では、エネルギーは「コンデンサーに蓄えられている」と言います。 しかし、具体的にどこにあるのでしょうか。電荷の上にあるのでしょうか。極板の中にあるのでしょうか。
エネルギー密度 $u = \frac{1}{2}\varepsilon_0 E^2$ は、電場が存在する場所にエネルギーが分布していることを示しています。
平行板コンデンサーの場合、電場は極板間の空間にのみ存在し、エネルギーもその空間に蓄えられています。 電荷は極板の表面にありますが、エネルギーは極板の間の空間にあります。
この「エネルギーは電場に蓄えられている」という見方は、電磁波のエネルギーを理解する際に不可欠になります。 電磁波は電荷から離れて空間を伝わりますが、波とともにエネルギーを運びます。 このエネルギーは、電場(と磁場)のエネルギー密度で記述されます。
太陽からの光(電磁波)は真空中を伝わり、地球にエネルギーを届けます。 太陽と地球の間には何もない真空が広がっていますが、そこに電場と磁場が存在し、エネルギーを運んでいます。
もしエネルギーが「電荷の上にだけ」あるとすると、電磁波がエネルギーを運ぶ仕組みを説明できません。 電場そのものがエネルギーを持っているからこそ、電磁波は真空中でもエネルギーを伝えられるのです。
Q1. $U = \frac{1}{2}CV^2$ の $\frac{1}{2}$ はどこから来ますか。
Q2. エネルギー密度 $u = \frac{1}{2}\varepsilon_0 E^2$ の物理的意味を述べてください。
Q3. $U = QV$ ではなく $U = \frac{1}{2}QV$ となる理由を説明してください。
Q4. エネルギーが電場の中にあるという見方が重要になるのは、どのような場面ですか。
静電エネルギーとエネルギー密度を、問題で確認しましょう。
容量 $C = 10\,\mu\text{F}$ のコンデンサーに $V = 200\,\text{V}$ の電圧をかけた。次の問いに答えよ。
(1) 蓄えられる静電エネルギー $U$ を求めよ。
(2) 電圧を2倍の $400\,\text{V}$ にすると、エネルギーは何倍になるか。
(1) $U = \frac{1}{2}CV^2 = \frac{1}{2} \times 10 \times 10^{-6} \times 200^2 = 0.20\,\text{J}$
(2) $U \propto V^2$ なので、電圧を2倍にするとエネルギーは $2^2 = 4$ 倍、すなわち $0.80\,\text{J}$ になる。
$U = \frac{1}{2}CV^2$ を使う。容量 $C$ は変化しないので、エネルギーは電圧の2乗に比例する。
面積 $S = 0.010\,\text{m}^2$、極板間距離 $d = 2.0\,\text{mm}$ の平行板コンデンサーに $V = 100\,\text{V}$ の電圧をかけた。$\varepsilon_0 = 8.85 \times 10^{-12}\,\text{F/m}$ とする。
(1) 極板間の電場の大きさ $E$ を求めよ。
(2) エネルギー密度 $u = \frac{1}{2}\varepsilon_0 E^2$ を計算せよ。
(3) エネルギー密度に極板間の体積を掛けて全エネルギーを求め、$U = \frac{1}{2}CV^2$ の結果と一致することを確認せよ。
(1) $E = V/d = 100/(2.0 \times 10^{-3}) = 5.0 \times 10^4\,\text{V/m}$
(2) $u = \frac{1}{2} \times 8.85 \times 10^{-12} \times (5.0 \times 10^4)^2 = 0.011\,\text{J/m}^3$
(3) $U = u \times Sd = 0.011 \times 0.010 \times 2.0 \times 10^{-3} = 2.2 \times 10^{-7}\,\text{J}$。$C = \varepsilon_0 S/d = 4.43 \times 10^{-11}\,\text{F}$、$U = \frac{1}{2}CV^2 = \frac{1}{2} \times 4.43 \times 10^{-11} \times 100^2 = 2.2 \times 10^{-7}\,\text{J}$。一致する。
エネルギー密度と体積から全エネルギーを求めるアプローチと、$\frac{1}{2}CV^2$ から直接求めるアプローチは、同じ結果を与える。これは両者が同じ物理を異なる形で表現していることを示している。
容量 $C$ のコンデンサーを電荷 $0$ から $Q$ まで充電する過程について、次の問いに答えよ。
(1) 充電の途中で電荷 $q$ が蓄えられているとき、微小電荷 $dq$ を追加するのに必要な仕事 $dW$ を求めよ。
(2) 全充電過程で外力がする仕事 $W$ を積分で求め、$U = Q^2/(2C)$ を導出せよ。
(3) 「$U = QV$ ではなく $U = \frac{1}{2}QV$ になる理由」を、充電過程における電位差の変化に基づいて説明せよ。
(1) 電荷 $q$ が蓄えられているとき電位差は $V = q/C$。$dW = V\,dq = (q/C)\,dq$
(2) $W = \int_0^Q \dfrac{q}{C}\,dq = \dfrac{1}{C}\left[\dfrac{q^2}{2}\right]_0^Q = \dfrac{Q^2}{2C}$
(3) 充電開始時の電位差は $0$、充電完了時の電位差は $V = Q/C$。充電中、電位差は $0$ から $V$ まで線形に増加する。したがって仕事は最終電位差 $V$ での仕事ではなく、平均電位差 $V/2$ での仕事に等しい。$U = Q \times V/2 = \frac{1}{2}QV$。
この導出は、Q-Vグラフの面積として理解することもできる。$V = q/C$ は $q$ に比例する直線であり、$0$ から $Q$ までの面積は三角形の面積 $\frac{1}{2} \times Q \times V = \frac{1}{2}QV$ に等しい。
力学のばねのポテンシャルエネルギー $U = \frac{1}{2}kx^2$ と構造が同じである。ばねを伸ばすとき、復元力は伸びに比例して増加するため、$\frac{1}{2}$ が現れる。コンデンサーでも電位差が電荷に比例して増加するため、同じ $\frac{1}{2}$ が現れる。