第22章 原子核と放射線

原子核の構造
─ 核力と結合エネルギー

高校物理では、原子核は陽子と中性子(まとめて核子)から構成されると学び、質量数 $A$ と原子番号 $Z$ で原子核を分類します。 結合エネルギーという言葉も登場しますが、その計算方法や物理的意味は深く扱われません。

大学物理では、核子同士を結びつける核力の正体が強い相互作用の残余力であること、 結合エネルギーが質量欠損 $\Delta m$ から $E = \Delta mc^2$ で定量的に計算できること、 そして核子あたりの結合エネルギー曲線が核分裂と核融合のエネルギー放出を統一的に説明することを学びます。

この記事では、原子核の構造を定量的に理解するための道具を整理します。 高校の「暗記する原子核」から「計算で理解する原子核」へ視点を切り替えることで、 核エネルギーの問題に対して根拠を持って答えられるようになります。

1高校物理での扱いを確認する

高校物理では、原子核について次のことを学びます。

  • 原子核は陽子(正電荷)と中性子(電荷なし)から構成される。これらをまとめて核子と呼ぶ
  • 原子番号 $Z$ は陽子の数、質量数 $A$ は核子の総数($A = Z + N$、$N$ は中性子数)
  • 同じ元素でも中性子数が異なるものを同位体(アイソトープ)と呼ぶ
  • 原子核の質量は、構成する核子の質量の合計よりわずかに小さい(質量欠損
  • 質量欠損に対応するエネルギーが結合エネルギーである

これらの知識は正しく、入試でも十分に役立ちます。 ただし、高校の範囲では次の点が扱われていません。

  • 核子同士を結びつけている力(核力)はどのような力か。陽子同士はクーロン力で反発するはずなのに、なぜ原子核は安定に存在するのか
  • 結合エネルギーを定量的に計算する方法。具体的な原子核について、結合エネルギーが何 MeV かを求めること
  • なぜ核分裂と核融合の両方でエネルギーが放出されるのか。一見矛盾するこの事実の統一的説明

大学の視点を導入すると、これらの問いに定量的に答えられるようになります。

2大学の視点で何が変わるか

大学物理で原子核を学ぶと、高校での理解がどう深まるかを確認します。

高校 vs 大学:原子核の理解
高校:核力は「強い力」
陽子と中性子を結びつける強い力がある、とだけ学ぶ。
大学:核力は強い相互作用の残余力
到達距離約1fm、電荷非依存、飽和性など定量的な性質が分かる。
高校:質量欠損がある
核子の質量の和より原子核の質量が小さいことを知識として覚える。
大学:$B = (Zm_p + Nm_n - M)c^2$ で計算する
具体的な原子核の結合エネルギーを数値で求められる。
高校:核分裂も核融合もエネルギーを出す
「どちらもエネルギーを出す」と覚えるが、なぜ両方なのかは不明確。
大学:結合エネルギー曲線で統一的に説明できる
Fe-56付近が最大。軽い核も重い核も、Fe付近に向かう反応でエネルギーを放出。
この記事で得られること

原子核の大きさを定量的に見積もれるようになる。 原子核の半径 $R \approx R_0 A^{1/3}$ という経験式から、核密度がほぼ一定であることが理解できます。

結合エネルギーを計算できるようになる。 質量欠損 $\Delta m$ と $E = \Delta mc^2$ を使って、具体的な原子核の結合エネルギーを MeV 単位で求められるようになります。

核分裂と核融合の両方でエネルギーが出る理由を説明できるようになる。 核子あたりの結合エネルギー曲線という1つのグラフで、両方の現象を統一的に理解できます。

3原子核の大きさと核密度

原子核の大きさは、電子散乱実験などで測定されています。 その結果、原子核の半径には次の経験式が成り立つことが分かっています。

原子核の半径

$$R \approx R_0 A^{1/3}$$

$R_0 \approx 1.2 \sim 1.3\,\text{fm}$($1\,\text{fm} = 10^{-15}\,\text{m}$)、$A$ は質量数。

この式は、原子核の体積が核子の数 $A$ に比例することを意味します。 球の体積は $V = \frac{4}{3}\pi R^3$ なので、

$$V = \frac{4}{3}\pi R_0^3 A$$

つまり体積は $A$ に比例し、核子1個あたりの体積は $\frac{4}{3}\pi R_0^3$ で一定です。 これは核密度がほぼ一定であることを示しています。

核密度の見積もり

核子の質量を $m \approx 1.67 \times 10^{-27}\,\text{kg}$、$R_0 = 1.2\,\text{fm}$ とすると、

$$\rho = \frac{Am}{V} = \frac{Am}{\frac{4}{3}\pi R_0^3 A} = \frac{m}{\frac{4}{3}\pi R_0^3} \approx 2.3 \times 10^{17}\,\text{kg/m}^3$$

これは水の密度($10^3\,\text{kg/m}^3$)の約 $2 \times 10^{14}$ 倍です。原子核は極めて高密度な物質です。

核密度が一定であることの意味

核密度が核子数によらずほぼ一定であるという事実は、核力の重要な性質(飽和性)を反映しています。 各核子は近くの核子としか相互作用しないため、核子が増えても密度は変わりません。 これは液体の性質と似ており、原子核を液滴として扱う「液滴模型」の根拠になっています。

4核力の性質

原子核の中には陽子が複数存在します。 陽子同士はクーロン力で反発するはずなのに、原子核はなぜ安定に存在できるのでしょうか。 それは、クーロン力よりもはるかに強い引力 ── 核力が働いているためです。

核力の基本的性質

核力には次のような特徴があります。

  • 短距離力:到達距離は約 $1\,\text{fm}$ 程度。核子間の距離が $1\,\text{fm}$ を超えると急速に弱くなります。 一方、クーロン力は $1/r^2$ で減衰するため遠くまで届きます。核力が近距離でクーロン力に勝つから原子核は安定なのです
  • 電荷非依存(荷電独立性):陽子-陽子間、中性子-中性子間、陽子-中性子間の核力はほぼ同じ強さです。 核力は電荷に依存しません
  • 飽和性:各核子は近くの数個の核子としか強く相互作用しません。 すべての核子と相互作用するわけではないため、結合エネルギーは核子数 $A$ にほぼ比例します
  • 強い相互作用の残余力:核力の根源は、クォーク間に働く強い相互作用(量子色力学で記述)です。 核力はその残余効果として核子間に現れます
落とし穴:「核力は万有引力より強いから原子核を保つ」ではない

誤:核力は万有引力よりも強いので、原子核内の陽子の反発に打ち勝つ

正:核力が打ち勝っているのはクーロン力(電磁気力)に対してです。 万有引力は核子間では極めて弱く(クーロン力の $10^{-36}$ 倍程度)、原子核の安定性にはまったく寄与しません。 核力の比較対象はクーロン力です。

4つの基本的な力

自然界には4つの基本的な相互作用が存在します。 強さの順に、強い相互作用(核力の起源)、電磁相互作用(クーロン力)、弱い相互作用($\beta$ 崩壊の原因)、重力相互作用です。 核力は最強の力の残余効果であるため、クーロン力に打ち勝つことができます。

5質量欠損と結合エネルギー

原子核の質量 $M$ は、それを構成する陽子と中性子の質量の単純な和よりも小さいことが実験的に知られています。 この差を質量欠損と呼びます。

質量欠損と結合エネルギー

質量欠損:

$$\Delta m = Zm_p + Nm_n - M$$

結合エネルギー:

$$B = \Delta m \cdot c^2 = (Zm_p + Nm_n - M)c^2$$

$m_p$:陽子の質量、$m_n$:中性子の質量、$M$:原子核の質量、$Z$:陽子数、$N$:中性子数。 $B > 0$ であれば、バラバラの核子よりも原子核の状態の方がエネルギーが低い(安定)ことを意味します。

結合エネルギー $B$ の物理的意味は明確です。 原子核をバラバラの核子に分解するために必要なエネルギーが結合エネルギーです。 結合エネルギーが大きいほど、原子核は安定です。

具体例:ヘリウム4の結合エネルギー

$^4\text{He}$ の結合エネルギーの計算

$^4\text{He}$ は陽子2個、中性子2個から構成されます。

陽子の質量:$m_p = 1.007276\,\text{u}$

中性子の質量:$m_n = 1.008665\,\text{u}$

$^4\text{He}$ の原子核質量:$M = 4.001506\,\text{u}$

質量欠損:$\Delta m = 2 \times 1.007276 + 2 \times 1.008665 - 4.001506 = 0.030376\,\text{u}$

$1\,\text{u} = 931.5\,\text{MeV}/c^2$ を用いると、

$$B = 0.030376 \times 931.5 = 28.3\,\text{MeV}$$

核子あたりの結合エネルギー:$B/A = 28.3 / 4 = 7.07\,\text{MeV}$

結合エネルギーは「エネルギーの借金」

核子が集まって原子核を形成するとき、結合エネルギーに相当する分だけ質量が減少します。 この「失われた質量」は、核子同士が結合する際にエネルギーとして放出されたものです。

逆に原子核を分解するには、その分のエネルギーを外部から供給する必要があります。 結合エネルギーが大きい原子核ほど、分解に多くのエネルギーが必要 ── つまり安定です。

6核子あたりの結合エネルギー曲線

各原子核の核子あたりの結合エネルギー $B/A$ を質量数 $A$ に対してプロットすると、 原子核物理で最も重要なグラフの1つが得られます。

曲線の特徴

  • $B/A$ は $A$ が小さい領域で急激に増加し、$A \approx 56$(鉄 $^{56}\text{Fe}$)付近で最大値(約8.8 MeV)を取ります
  • $A > 56$ では $B/A$ は緩やかに減少します
  • $^4\text{He}$、$^{12}\text{C}$、$^{16}\text{O}$ など特定の原子核で $B/A$ が周囲より大きい(特に安定)

この曲線の形状から、核分裂と核融合の両方でエネルギーが放出される理由が説明できます。

核融合でエネルギーが出る理由

軽い原子核($A$ が小さい領域)では $B/A$ が小さい値です。 これらが融合してより重い原子核になると、$B/A$ が増加します。 核子あたりの結合エネルギーが増えるということは、核子1個あたりのエネルギーが低下する(より安定になる)ことを意味します。 減少したエネルギー分が放出されます

核分裂でエネルギーが出る理由

重い原子核($A$ が大きい領域)では $B/A$ が $^{56}\text{Fe}$ より小さい値です。 これが分裂して中程度の質量数の原子核になると、$B/A$ が増加します。 核融合の場合と同じ論理で、結合エネルギーの増加分がエネルギーとして放出されます。

核分裂と核融合の統一的理解

核分裂も核融合も、核子あたりの結合エネルギーが増える方向への変化です。 曲線の山頂($^{56}\text{Fe}$ 付近)に向かって変化する反応は、エネルギーを放出します。

軽い核は融合によって山頂に向かい、重い核は分裂によって山頂に向かいます。 高校では「どちらもエネルギーを出す」と別々に覚えていた2つの現象が、 1つの曲線の形状から統一的に理解できます。

落とし穴:「結合エネルギーが大きい = 高エネルギー」ではない

誤:結合エネルギーが大きい原子核ほどエネルギーが高い

正:結合エネルギーが大きい原子核ほどエネルギーが低く、安定です。 結合エネルギーは「分解するのに必要なエネルギー」であり、 それが大きいということは深いポテンシャルの谷にいることを意味します。

鉄が宇宙で最も安定な元素である理由

$^{56}\text{Fe}$ が核子あたりの結合エネルギー曲線の頂点に位置するということは、 鉄が最も安定な原子核であることを意味します。 恒星の内部で核融合反応が進むと、最終的に鉄が生成されます。 鉄より重い元素を作る核融合はエネルギーを吸収するため、鉄の生成をもって恒星の核融合は停止します。 大質量星がこの段階に達すると、超新星爆発が起こります。

7つながりマップ

原子核の構造の理解は、この章の残りの記事すべての基盤になります。

  • ← A-21-4 水素原子のエネルギー準位:原子のエネルギー準位が離散的であるように、原子核にもエネルギー準位がある。A-21-4で学んだ量子化の概念が原子核にも適用される。
  • → A-22-2 放射性崩壊:不安定な原子核がより安定な状態に遷移する過程。結合エネルギーの差がα崩壊やβ崩壊で放出されるエネルギーに対応する。
  • → A-22-3 半減期:放射性崩壊の速度を記述する。崩壊が起こるかどうかはエネルギー的に可能かどうか(結合エネルギーの比較)で決まる。
  • → A-22-4 核反応とエネルギー:核分裂・核融合で放出されるエネルギーの定量計算。本記事の結合エネルギー曲線が直接的に使われる。

📋まとめ

  • 原子核の半径は $R \approx R_0 A^{1/3}$($R_0 \approx 1.2\,\text{fm}$)で、核密度はほぼ一定(約 $2.3 \times 10^{17}\,\text{kg/m}^3$)
  • 核力は強い相互作用の残余力であり、到達距離約1fm、電荷非依存、飽和性という性質を持つ
  • 結合エネルギーは $B = (Zm_p + Nm_n - M)c^2$ で計算でき、原子核をバラバラにするのに必要なエネルギーに等しい
  • 核子あたりの結合エネルギー $B/A$ は $^{56}\text{Fe}$ 付近で最大となり、軽い核の融合と重い核の分裂の両方でエネルギーが放出される理由を統一的に説明する
  • 結合エネルギーが大きいほど原子核は安定であり、分解に多くのエネルギーが必要となる

確認テスト

Q1. 原子核の半径の経験式 $R \approx R_0 A^{1/3}$ から、原子核の体積は何に比例しますか。また、これは核密度について何を意味しますか。

▶ クリックして解答を表示体積 $V = \frac{4}{3}\pi R^3 = \frac{4}{3}\pi R_0^3 A$ なので、体積は質量数 $A$ に比例します。核子1個あたりの体積が一定なので、核密度はほぼ一定です。

Q2. 核力の主な特徴を3つ挙げてください。

▶ クリックして解答を表示(1) 短距離力(到達距離約1fm)、(2) 電荷非依存(陽子-陽子間も中性子-中性子間も同じ強さ)、(3) 飽和性(各核子は近くの核子としか強く相互作用しない)。

Q3. 結合エネルギー $B$ の物理的意味を説明してください。$B$ が大きいとき、原子核は安定ですか、不安定ですか。

▶ クリックして解答を表示結合エネルギーとは、原子核をバラバラの核子に分解するために必要なエネルギーです。$B$ が大きいほど分解に多くのエネルギーが必要なので、原子核は安定です。

Q4. 核分裂と核融合の両方でエネルギーが放出される理由を、核子あたりの結合エネルギー曲線を用いて説明してください。

▶ クリックして解答を表示$B/A$ は $^{56}\text{Fe}$ 付近で最大。軽い核が融合すると $B/A$ が増加(より安定になる)し、その差分がエネルギーとして放出されます。重い核が分裂しても同様に $B/A$ が増加し、エネルギーが放出されます。どちらも曲線の頂点に向かう変化であるため、エネルギーが出ます。

10演習問題

原子核の構造と結合エネルギーに関する理解を、問題で確認しましょう。

A 基礎レベル

22-1-1 A 基礎 核の大きさ

$R_0 = 1.2\,\text{fm}$ として、次の原子核の半径を求めよ。

(1) $^{12}\text{C}$(炭素12)

(2) $^{238}\text{U}$(ウラン238)

(3) (1)と(2)の結果から、ウラン原子核の体積は炭素原子核の体積の何倍か求めよ。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

(1) $R = 1.2 \times 12^{1/3} = 1.2 \times 2.29 \approx 2.7\,\text{fm}$

(2) $R = 1.2 \times 238^{1/3} = 1.2 \times 6.20 \approx 7.4\,\text{fm}$

(3) $V_U / V_C = (R_U / R_C)^3 = A_U / A_C = 238 / 12 \approx 19.8$ 倍

解説

$R = R_0 A^{1/3}$ を使います。体積比は $R^3$ の比、すなわち $A$ の比に等しくなります。 これは核密度が一定であることの直接的な帰結です。ウラン原子核はおよそ20倍の核子を含み、体積もおよそ20倍です。

B 発展レベル

22-1-2 B 発展 結合エネルギー 計算

$^{56}\text{Fe}$(鉄56)の原子核質量は $M = 55.9207\,\text{u}$ である。陽子の質量 $m_p = 1.007276\,\text{u}$、中性子の質量 $m_n = 1.008665\,\text{u}$、$1\,\text{u} = 931.5\,\text{MeV}/c^2$ として、次の問いに答えよ。

(1) $^{56}\text{Fe}$ の質量欠損 $\Delta m$ を u 単位で求めよ($Z = 26$、$N = 30$)。

(2) 結合エネルギー $B$ を MeV 単位で求めよ。

(3) 核子あたりの結合エネルギー $B/A$ を求め、この値が核種の中でほぼ最大であることの物理的意味を述べよ。

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解答

(1) $\Delta m = 26 \times 1.007276 + 30 \times 1.008665 - 55.9207 = 26.1891 + 30.2600 - 55.9207 = 0.5284\,\text{u}$

(2) $B = 0.5284 \times 931.5 = 492.2\,\text{MeV}$

(3) $B/A = 492.2 / 56 = 8.79\,\text{MeV}$。これが核種の中でほぼ最大であることは、$^{56}\text{Fe}$ が最も安定な原子核であることを意味する。

解説

質量欠損の計算では、陽子と中性子の数を正確に使う必要があります。 $^{56}\text{Fe}$ の場合、$Z = 26$(陽子26個)、$N = A - Z = 56 - 26 = 30$(中性子30個)です。

$B/A \approx 8.8\,\text{MeV}$ が最大であることは、他のどの核に変化してもエネルギーが必要になること、 すなわち鉄が核反応によって自発的に変化しないことを意味します。

採点ポイント
  • $Z$ と $N$ の値を正しく使用(2点)
  • 質量欠損の計算(3点)
  • MeV への換算(2点)
  • 最大であることの物理的意味(3点)

C 応用レベル

22-1-3 C 応用 核融合 エネルギー 論述

重水素 $^2\text{H}$(核子あたりの結合エネルギー $B/A = 1.11\,\text{MeV}$)2個が融合して $^4\text{He}$($B/A = 7.07\,\text{MeV}$)が生成される反応を考える。

(1) 反応前後の全結合エネルギーの差を求め、この反応で放出されるエネルギーを MeV 単位で見積もれ。

(2) 核融合でエネルギーが放出される理由を、核子あたりの結合エネルギー曲線の観点から説明せよ。

(3) 鉄($^{56}\text{Fe}$)同士の核融合ではエネルギーは放出されるか。理由を述べよ。

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解答

(1) 反応前の全結合エネルギー:$2 \times 2 \times 1.11 = 4.44\,\text{MeV}$。 反応後の全結合エネルギー:$4 \times 7.07 = 28.28\,\text{MeV}$。 放出エネルギー:$28.28 - 4.44 = 23.8\,\text{MeV}$

(2) 軽い核は $B/A$ が小さい。融合してより重い核になると $B/A$ が増加する(曲線の頂点に近づく)。 核子あたりの結合エネルギーが増加した分だけ、系全体のエネルギーが低下し、その差がエネルギーとして放出される。

(3) 放出されない。$^{56}\text{Fe}$ は $B/A$ がほぼ最大の位置にある。鉄より重い核の $B/A$ は鉄より小さいため、 融合後に $B/A$ は減少する。これはエネルギーの吸収を意味するので、自発的には起こらない。

解説

(1) 結合エネルギーの増加分が放出エネルギーに対応します。 反応後の方が結合エネルギーが大きい(より安定)ため、差分がエネルギーとして放出されます。

(2) 核子あたりの結合エネルギー曲線の「上り坂」の方向への反応がエネルギーを放出します。 軽い核の融合は曲線を左から右へ登ることに対応します。

(3) 鉄は曲線の頂点にいるので、どちらの方向に変化してもエネルギーを吸収します。 これが恒星の核融合が鉄で停止する理由です。

採点ポイント
  • 全結合エネルギーの正しい計算(3点)
  • 差分をエネルギー放出と結びつける(2点)
  • $B/A$ 曲線の増加と放出の対応を説明(3点)
  • 鉄が頂点であることから融合でエネルギー吸収と結論(2点)