第V編 原子物理 ─ 見通し

古典物理の限界と量子論の始まり ── 「なぜ飛び飛びなのか」に数学的な答えを与える。

1この編で学ぶこと

原子物理は、古典物理の限界と量子論の始まりを扱う分野です。高校では「光は粒子でもあり波でもある」「エネルギーは飛び飛びの値をとる」と教わりますが、なぜそうなるのかには十分な説明がありません。

大学では、シュレーディンガー方程式を通じて「なぜエネルギーが飛び飛びになるのか」に数学的な答えが与えられます。境界条件を満たす解が離散的にしか存在しないという数学的事実が、量子化の本質です。また、光電効果やコンプトン散乱を通じて、古典物理では説明できない現象がどのように量子論を必然にしたのかを理解します。

この編の核心

高校で「そういうもの」として受け入れていた量子的な現象(エネルギーの量子化、波動と粒子の二重性)が、シュレーディンガー方程式という微分方程式の数学的性質として理解されます。

2高校との主な違い

高校 → 大学で何が変わるか
テーマ 高校 大学
光電効果 結果を暗記 光量子仮説の必然性を理解
ボーアモデル 量子条件を暗記 ド・ブロイ波による説明
エネルギー準位 $E_n = -13.6/n^2$ eV を暗記 シュレーディンガー方程式の解として導出
半減期 公式を暗記 指数関数的減衰の微分方程式
$E = mc^2$ 暗記 質量欠損と核エネルギーの定量計算

3必要な数学

この編で使う数学は、微分方程式(力学で習得済み)と指数関数です。シュレーディンガー方程式は2階の常微分方程式であり、力学の第2章で学んだ手法がそのまま活きます。新たに必要な概念は少なく、これまでの蓄積で十分対応できます。

4章の見通し(3章11記事)

第20章
光の粒子性(3記事)
光電効果とコンプトン散乱を通じて、光の粒子的性質と古典物理の限界を理解する。
第21章
粒子の波動性と原子モデル(4記事)
ド・ブロイ波から出発し、シュレーディンガー方程式を導入して水素原子のエネルギー準位を導出する。
第22章
原子核と放射線(4記事)
核力と結合エネルギー、放射性崩壊の微分方程式、核分裂・核融合のエネルギー計算を扱う。