高校物理では、コンデンサーの充放電のグラフの形を「指数関数的に変化する」として学びます。
時定数の概念を扱うこともありますが、なぜその形になるかの導出は範囲外です。
大学物理では、キルヒホッフの法則と $Q = CV$ を組み合わせると1階微分方程式が得られ、
その解が指数関数になることを示します。
グラフの形は暗記ではなく、微分方程式の解として導出されるものです。
この記事では、RC回路の充電・放電を微分方程式で解き、
時定数 $\tau = RC$ がすべてを決めることを示します。
高校物理では、コンデンサーの充放電を次のように扱います。
高校の扱いの特徴を整理します。
充放電のグラフを「導出」できる。 キルヒホッフの法則と $Q = CV$ から微分方程式を立て、指数関数の解を導きます。 グラフの形は暗記ではなく、物理法則の帰結です。
任意の時刻の電荷・電流を計算できる。 「3秒後の電荷はいくらか」という問いに定量的に答えられるようになります。
時定数 $\tau = RC$ の物理的意味を理解できる。 なぜ $R \times C$ が時間の単位を持つか、$\tau$ が何を決めるかが分かります。
エネルギー収支を定量的に理解できる。 充電時に抵抗で消費されるエネルギーが、コンデンサーに蓄えられるエネルギーと等しいことを示します。
起電力 $\mathcal{E}$ の電池、抵抗 $R$、容量 $C$ のコンデンサーが直列に接続された回路を考えます。 $t = 0$ でスイッチを入れ、コンデンサーの初期電荷は $Q(0) = 0$ とします。
KVL より、閉ループを一周すると:
$$\mathcal{E} - RI - \frac{Q}{C} = 0$$
ここで $I = dQ/dt$(電流は電荷の時間微分)なので:
$$\mathcal{E} = R\frac{dQ}{dt} + \frac{Q}{C}$$
これは $Q(t)$ に関する1階線形微分方程式です。
微分方程式を整理します:
$$\frac{dQ}{dt} = \frac{\mathcal{E}}{R} - \frac{Q}{RC}$$
$Q_\infty = C\mathcal{E}$(十分時間が経ったときの最終電荷)とおくと:
$$\frac{dQ}{dt} = -\frac{1}{RC}(Q - Q_\infty)$$
これは $Q - Q_\infty$ が指数関数的に減衰することを意味します。$u = Q - Q_\infty$ とおくと:
$$\frac{du}{dt} = -\frac{u}{RC}$$
この解は $u(t) = u(0) \cdot e^{-t/RC}$ です。$u(0) = Q(0) - Q_\infty = -C\mathcal{E}$ より:
$$Q(t) = C\mathcal{E}\left(1 - e^{-t/RC}\right)$$
$$Q(t) = C\mathcal{E}\left(1 - e^{-t/RC}\right)$$
$$I(t) = \frac{\mathcal{E}}{R}\,e^{-t/RC}$$
高校では「充電すると電荷はだんだん増えて飽和する」というグラフの形を覚えました。
大学では、キルヒホッフの法則($\mathcal{E} = RI + Q/C$)と $I = dQ/dt$ から微分方程式を立て、 その解として $Q(t) = C\mathcal{E}(1 - e^{-t/RC})$ を導出します。
グラフの形は物理法則の帰結であり、暗記すべきものではありません。
初期電荷 $Q_0$ のコンデンサーが抵抗 $R$ を通じて放電する場合を考えます。 電池はありません。
KVL より:
$$0 = RI + \frac{Q}{C}$$
$I = dQ/dt$ を代入(放電なので $I < 0$ に注意):
$$R\frac{dQ}{dt} + \frac{Q}{C} = 0$$
$$\frac{dQ}{dt} = -\frac{Q}{RC}$$
これは最も基本的な微分方程式で、解は:
$$Q(t) = Q_0 \, e^{-t/RC}$$
$$Q(t) = Q_0 \, e^{-t/RC}$$
$$I(t) = -\frac{Q_0}{RC}\,e^{-t/RC}$$
充電も放電も、同じ形の微分方程式 $dQ/dt = -Q/(RC) + (\text{定数})$ から導かれます。 異なるのは定数項(電池の起電力があるかないか)だけです。
充電の解 $Q(t) = C\mathcal{E}(1 - e^{-t/RC})$ と放電の解 $Q(t) = Q_0 e^{-t/RC}$ に共通して現れる量 $RC$ を時定数($\tau$)といいます。
$$\tau = RC$$
時定数 $\tau$ は、過渡現象の「速さ」を決める量です。
誤解:「$R$ が大きいとたくさん電圧がかかるから充電が速い」
実際:$\tau = RC$ なので、$R$ が大きいほど時定数が大きくなり、充電は遅くなる。 $R$ が大きいと電流が制限されるためです。
$R = V/I$、$C = Q/V$ なので:
$$RC = \frac{V}{I} \cdot \frac{Q}{V} = \frac{Q}{I} = \frac{\text{電荷}}{\text{電荷/時間}} = \text{時間}$$
抵抗が「電流を制限する度合い」を表し、容量が「蓄えられる電荷の量」を表すので、 その積が「蓄えるのにかかる時間」に対応するのは自然です。
充電が完了したとき、コンデンサーに蓄えられるエネルギーは $U_C = \frac{1}{2}C\mathcal{E}^2$ です。 一方、電池が供給した全エネルギーは $U_{\text{total}} = Q_\infty \cdot \mathcal{E} = C\mathcal{E}^2$ です。
供給エネルギー $C\mathcal{E}^2$ のうち、コンデンサーに蓄えられるのは $\frac{1}{2}C\mathcal{E}^2$。 残りの $\frac{1}{2}C\mathcal{E}^2$ はどこに行ったのでしょうか。
抵抗での消費電力は $P_R = I^2 R$ です。充電時の電流は $I(t) = (\mathcal{E}/R)e^{-t/RC}$ なので:
$$U_R = \int_0^{\infty} I^2 R \, dt = \int_0^{\infty} \frac{\mathcal{E}^2}{R} e^{-2t/RC} \, dt$$
$$= \frac{\mathcal{E}^2}{R} \cdot \frac{RC}{2} = \frac{1}{2}C\mathcal{E}^2$$
$$U_{\text{battery}} = C\mathcal{E}^2 = \underbrace{\frac{1}{2}C\mathcal{E}^2}_{U_C\text{(コンデンサー)}} + \underbrace{\frac{1}{2}C\mathcal{E}^2}_{U_R\text{(抵抗で熱に)}}$$
抵抗で消費されるエネルギーが $\frac{1}{2}C\mathcal{E}^2$ であることは、$R$ の値によらず成り立ちます。
$R$ が大きいと電流は小さいが充電に時間がかかり、$R$ が小さいと電流は大きいが短時間で終わります。 結局、抵抗での消費エネルギーの総量は同じです。
この「半分は必ず熱になる」という事実は、エネルギー保存則の直接的帰結です。
Q1. RC回路の充電における $Q(t)$ の式を書いてください。
Q2. 時定数 $\tau = RC$ の物理的意味を述べてください。
Q3. RC回路の充電で、抵抗で消費されるエネルギーはコンデンサーに蓄えられるエネルギーと比べてどうなりますか。
Q4. $R$ [$\Omega$] $\times$ $C$ [F] がなぜ時間の単位 [s] を持つか、次元解析で示してください。
RC回路の微分方程式を立てて解く練習をしましょう。
$R = 10\,\text{k}\Omega$、$C = 100\,\mu\text{F}$ のRC回路がある。次の問いに答えよ。
(1) 時定数 $\tau$ を求めよ。
(2) 充電開始から $\tau$ 秒後のコンデンサーの電荷は、最終値の何 % か。
(3) ほぼ完全に充電されるのは充電開始からおよそ何秒後か。
(1) $\tau = RC = 10 \times 10^3 \times 100 \times 10^{-6} = 1.0$ s
(2) $1 - e^{-1} \approx 0.632$、約 63.2%
(3) $5\tau = 5.0$ s($e^{-5} \approx 0.007$ なので 99.3% 充電)
$R$ と $C$ の積が時定数です。$10\,\text{k}\Omega \times 100\,\mu\text{F} = 1$ s と、次元を確認しながら計算してください。時定数の5倍の時間が経てば、実用上は充電完了とみなせます。
起電力 $\mathcal{E} = 10$ V、$R = 5\,\text{k}\Omega$、$C = 200\,\mu\text{F}$ のRC回路で、$t = 0$ にスイッチを入れてコンデンサーの充電を開始する。次の問いに答えよ。
(1) $Q(t)$ に関する微分方程式を立てよ。
(2) $Q(t)$ と $I(t)$ を求めよ。
(3) $t = 2$ s における電荷 $Q$ と電流 $I$ の値を求めよ。
(1) $R\dfrac{dQ}{dt} + \dfrac{Q}{C} = \mathcal{E}$ → $5000\dfrac{dQ}{dt} + 5000Q = 10$
(2) $\tau = RC = 5000 \times 200 \times 10^{-6} = 1.0$ s
$Q(t) = C\mathcal{E}(1 - e^{-t/\tau}) = 2.0 \times 10^{-3}(1 - e^{-t})$ C
$I(t) = \dfrac{\mathcal{E}}{R}e^{-t/\tau} = 2.0 \times 10^{-3} e^{-t}$ A
(3) $Q(2) = 2.0 \times 10^{-3}(1 - e^{-2}) \approx 2.0 \times 10^{-3} \times 0.865 \approx 1.73 \times 10^{-3}$ C
$I(2) = 2.0 \times 10^{-3} e^{-2} \approx 2.0 \times 10^{-3} \times 0.135 \approx 2.7 \times 10^{-4}$ A
KVL から微分方程式を立て、解を求めるプロセスです。$t = 2\tau$ なので最終値の $1 - e^{-2} \approx 86.5\%$ まで充電されています。高校では「3秒後の電荷はいくらか」に答えられませんでしたが、微分方程式の解があればどの時刻でも計算できます。
起電力 $\mathcal{E}$、抵抗 $R$、容量 $C$ のRC回路で充電を行う。次の問いに答えよ。
(1) 充電完了までに電池が供給する全エネルギーを求めよ。
(2) 充電完了時にコンデンサーに蓄えられるエネルギーを求めよ。
(3) 抵抗で消費されるエネルギーを $U_R = \int_0^{\infty} I^2 R \, dt$ から計算せよ。
(4) (1), (2), (3) の結果を比較し、エネルギー保存則が成り立つことを確認せよ。また、$U_R$ が $R$ の値に依存しないことの物理的意味を述べよ。
(1) $U_{\text{battery}} = Q_\infty \cdot \mathcal{E} = C\mathcal{E} \cdot \mathcal{E} = C\mathcal{E}^2$
(2) $U_C = \frac{1}{2}C\mathcal{E}^2$
(3) $U_R = \int_0^{\infty} \frac{\mathcal{E}^2}{R}e^{-2t/RC} \cdot R \, dt = \mathcal{E}^2 \int_0^{\infty} e^{-2t/RC} dt = \mathcal{E}^2 \cdot \frac{RC}{2} = \frac{1}{2}C\mathcal{E}^2$
(4) $U_{\text{battery}} = C\mathcal{E}^2 = \frac{1}{2}C\mathcal{E}^2 + \frac{1}{2}C\mathcal{E}^2 = U_C + U_R$。エネルギー保存則が成立。$U_R$ に $R$ が含まれないのは、$R$ が大きいと電流が小さくなるが充電に時間がかかり、$R$ が小さいと電流は大きいが短時間で充電が終わるため。消費電力と時間の積(エネルギー)が一定になる。
この結果は直感に反するかもしれません。抵抗を小さくしても消費エネルギーは変わらない ── これは $R \to 0$ の極限でも成り立ちます。つまり「抵抗ゼロでも半分のエネルギーが失われる」ように見えますが、実際にはこの場合は電磁波として放射されます。